世界ランキング1位のオックスフォード大学(University of Oxford)の特別な教育環境とは?

2019年9月10日

Times Higher Education(以下、THE)の世界大学ランキングで3年連続1位に選ばれているオックスフォード大学。天皇陛下が学生時代にご留学されていたことでも有名ですが、ランキング上位や良い大学といった漠然としたイメージだけで、具体的にどういった特色があるかご存知の方はあまり多くはないと思います。そこで今回、オックスフォード大学の出身であり、日本事務所の代表も務められているアリソン・ビールさんに、ご自身の経験も踏まえながらオックスフォード大学の魅力についてお聞きしました。

今回インタビューさせていただいた方

アリソン・ビール(Alison Beale)さん

2012年よりオックスフォード大学日本事務所代表。オックスフォード大学セント・ヒルダズ・カレッジでフランス文学を学び、シェフィールド大学で日本研究の修士号を取得。

オックスフォード大学の特徴

ーまず始めに、大学のロケーションや周辺の環境について教えてください。

オックスフォード大学は建物が一箇所にまとまっているわけではなく、デパートメントやカレッジが市内に点在しており、大学の中に町があるような感じです。そして、英語圏最古の大学として900年以上の歴史があるので古い建物も多く、市内の至る所から大学の歴史を感じることができます。ロンドンから電車やバスで1時間の距離にありますが、買い物や食事など必要なものは市内にまとまっています。

ーオックスフォード大学の特徴について教えてください。

カレッジ・システム

オックスフォード大学では、日本の大学の学部に相当するデパートメントに所属すると共に、専門分野とは関係なくカレッジと呼ばれるものにも所属します。39個あるカレッジはそれぞれ少しずつ違いはありますが、基本的にカレッジとは寝食を共にするコミュニティのようなものです。学生寮やダイニングがあるだけでなく、カレッジの中に図書館やジムなどの運動施設があり、バーやカフェも併設されています。そして、学生が住んでいるだけでなく教員の部屋もあるので、ダイニングで教員と学生が一緒に食事をすることが1つの伝統になっています。例えば、芸術、物理などの異なる学科の教員や学生が同じテーブルで一緒に食事をするなど、様々な考え方に触れ、分野横断的に物事を考える機会になります。また、オックスフォード大学には多くの有名人が講義やセミナーのために来るため、その時にカレッジで食事をすることもあります。私が在学していた時もビル・クリントンさんやアウンサンスーチーさんが来たことがあるように、世界的なリーダーや研究者との刺激的な出会いもあります。

カレッジの1つであるオール・ソウルズ・カレッジ(All Souls College)

チュートリアル

カレッジ・システムとともにオックスフォード大学で特徴的なのがチュートリアルです。チュートリアルでは、週に1回1時間、1〜3人の学生に対してカレッジに所属する教員が1人ついて個別指導を行います。しかし、教員と週1回とディスカッションをするというような軽いものではありません。毎週8〜10冊の本が課題として出され、さらに必要に応じて関連する授業も受けたりしながらエッセイを書き、そのエッセイをもとに教員による1時間の個別指導が行われます。扱われるトピックは自分の専門分野に限りますが、8週間ある学期中は毎週、課された本を読んでエッセイを書き、1時間のチュートリアルに臨む、ということを繰り返します。そして、1年間で3学期、卒業までの3年間、もしくは4年間はずっとこのサイクルが続きます。このチュートリアルがオックスフォード大学における学部教育の中心なので、学期中はとても密度の濃い時間を過ごすことになります。また、教員は学生の力を伸ばすために様々な問いを投げかけてくれるため、チュートリアルの時間を通して自分の力を最大限に引き出してくれます。

アドミッションでのインタビュー

オックスフォード大学のアドミッションにはインタビューがあります。書類選考を通過した出願者は面接を受け、面接を通過しなければ合格になりません。2018年の例だと、約21500人の出願者のうち約10000人が面接に進み、最終的に約3300人が合格となりました。選考段階で面接をする大学は他にもあるかもしれませんが、オックスフォード大学の面接はチュートリアルに似ています。インタビューの中でも決まったことは聞かず、「世界中に砂の粒はいくつあるか」というような答えのない質問をして、わからないものに対してどのようにアプローチするかなど、考え方のプロセスを見ようとします。その中で知識があることは大切ですが、それ以上に知識を使っていかに問題を解決しようとするかというところを見ているので、インタビューは難しいですが非常に刺激的です。教員はインタビューを通して学生の専門分野に対する熱意やチュートリアル形式で学ぶための思考力などを見ていますが、学生もインタビューを通して自分がチュートリアルなどのオックスフォードの文化に合っているかを考えて欲しいと思います。そのため、国外にいる場合はスカイプでのインタビューも可能ですが、もし可能であれば実際の雰囲気を肌で感じるとためにも現地でインタビューを受けて欲しいです。

ボドリアン図書館(Bodleian Libray)

オックスフォード大学の人気学科

—オックスフォード大学ではどの学科が有名ですか?

オックスフォード大学というと哲学が有名ですが、実は哲学だけを学ぶことができる学科はありません。例えば、Philosophy and Modern Languages、Physics and Philosophy、Mathematics and Philosophyなどのように、哲学と他分野を組み合わせて学ぶようになっています。また、Philosophy, Politics and Economics (以下、PPE)は看板学科として特に有名です。オックスフォード大学はこれまで28人のイギリス首相を輩出していますが、その多くがPPEの出身です。このような有名な学科のせいか、オックスフォード大学というと人文系の学科の評価が高く、学生にも人気と思われがちですが、科学系の学科の評価が低いというわけではありません。冒頭部でオックスフォード大学がTHEの世界大学ランキングで3年連続1位に選ばれていると書きましたが、分野別で見ると社会科学が2年連続で世界1位に選ばれ、工学は3年連続1位、医学に至っては8年連続1位に選ばれています。このように、哲学などの人文系だけでなく、工学や医学などの科学系でも高い評価を受けているということはお伝えしたいです。

—留学生に人気の学科はありますか?

アジアからの留学生だと、台湾からの留学生は科学系の学科、中国からの留学生は経済学などの学科に多く在籍している印象です。日本からの留学生はあまり特定の分野に集中しているという印象はないです。⽇本からの留学生は学部・大学院あわせて全部で100程度です。学部の合格者はインターナショナルスクールに在籍していた学⽣が多く、⽇本国内の⾼校から出願して合格している学⽣は今のところ毎年1⼈か2⼈です。

—学費や奨学金について教えてください。

オックスフォード大学は多くのイギリス国内の大学と同じ国立大学なので、私立の大学ではありません。誤解されることが多いですが、国立大学なので学費も他の大学と同じくらいですし、周りよりも学費が高いということはありません。学部生を対象とした奨学金は決して多くはないですが、各カレッジは学生寮を提供できるので、金銭的な負担を抑えることもできます。

Blavatnik School of Government

オックスフォード大学への進学について

—他大学を経由して大学院からオックスフォード大学に進学するという選択肢もありますが、学部からオックスフォード大学に進学することの良さはどういったことがありますか?

確かに日本人の学生は学部生よりも大学院生の方が多いですが、オックスフォード大学の学部3年間(もしくは4年間)で得られるスキルは、他の大学に進学した場合と大きく異なると思います。チュートリアルでは世界でもトップクラスの教授と議論したり指導を受けたりすることもあり、18歳から21歳の間にかなりの密度で勉強することができるため、自分の力を最大限伸ばすことができる環境だと思います。また、チュートリアルで毎週のようにディスカッションしてエッセイを書かなければいけないので、自分の考えをしっかりと周りに伝える力がつきます。大学院生が指導教授からこのような個別指導を定期的に受けることは珍しくないですが、オックスフォード大学では学部生も同じように指導を受けることができ、こういったシステムを1年生の時から卒業まで導入しているのは、私の知る限りではオックスフォード大学の他にはケンブリッジ大学しかありません。現実的な部分では、世界中のどこに行ってもオックスフォード大学が良い大学だと皆が知っているので、コネクションだけでなく、周囲に対するアピールにもなります。これは卒業生にとっては絶対にプラスになることです。

—オックスフォード大学とアメリカのトップスクールを比べる人が多いと思いますが、そういった人に向けて何かアドバイスはありますか?

アメリカの大学については皆さんの方が詳しいかもしれませんが、アメリカでは1〜2年生の時は広く勉強し、3年生、4年生と学年が上がるにつれて自分の専攻や専門分野を絞っていくと思います。しかし、オックスフォード大学では、最初から専攻を決めて卒業まで1つの分野を集中的に勉強するので、人によって合う人と合わない人が出てくると思います。大学入学時にやりたいことが決まっている人や幅広く勉強しながら専攻を選びたい人にとってはアメリカの大学の方が良いかもしれませんが、数学やコンピューターサイエンス、歴史学のように既に自分の中でやりたいことが固まっているのであれば、イギリスの大学の方が集中して興味のある分野の勉強に取り組むことができます。

オックスフォード大学の歴史を感じさせる建物が多くあります

オックスフォード大学を考えている学生に向けて

—オックスフォード大学を目指す高校生に向けてアドバイスをお願いします。

オックスフォード大学での勉強は大変ですが、それだけの価値はあると思うので、機会があれば是非挑戦して欲しいです。少し具体的なアドバイスとしては、「なぜオックスフォード大学に行きたいか」ということを一度しっかりと考えてみてください。学生や保護者に話を聞くと「世界で1番だから」と言われることがありますが、そのモチベーションだけでは合格することは難いと思います。仮に合格できても、入学後に勉強を続けていくことは大変だと思います。そのため、学科やシステム、大学の特徴などを調べたり、チュートリアルで指導を受けることを想像してみたりして、オックスフォード大学が自分に合う大学か見極めないといけません。しかし、すごく良い大学ですし、オックスフォードでの学生生活も楽しいので、チュートリアルなどの指導方法が自分に合うと思ったら是非挑戦して欲しいです。

オックスフォード大学の入試情報はUniv-it!で検索!

オックスフォード大学というとどの分野も世界的な評価が高く、ランキングに目が向きがちですが、チュートリアルやカレッジ・システム、アドミッションでのインタビューなど、他の大学との違いがいくつもありました。学科によっては独自のエッセイやテストを課したり、オックスフォード大学とケンブリッジ大学を併願できないなどの出願時の制約もありますが、興味のある分野が明確な場合は最適な大学なのではないでしょうか。

競争率は学科によって大きく異なり、インタビュー率は30%未満から90%以上、合格率も10%未満から約40%と幅があります。また、出願に必要なIBスコアも38〜40と学科によって異なり、必須科目やエッセイ、テストなどの条件も学科ごとに決められています。そのため、もし興味のある分野がある場合は、Univ-it!で検索して、出願条件や合格率などのデータを確認してみてください。

オックスフォード大学

学科:
Biochemistry; Biology; Biomedical Sciences; Chemistry; Classics; Classics and Modern Languages; Computer Science; Computer Science and Philosophy; Economics and Management; Engineering Science; English Language and Literature; History; Human Sciences; Law; Materials Science; Mathematics; Mathematics and Philosophy; Medicine; Modern Languages; Modern Languages and Linguistics; Philosophy and Modern Languages; Philosophy, Politics and Economics; Physics; Physics and Philosophy; Psychology; Psychology, Philosophy and Linguistics など
選抜方法:
書類審査・インタビュー