【IB受験体験談】IB 39点でカナダの名門「トロント大学」へ! 受験体験談インタビュー!

IBを活用して海外大学進学を目指す高校生にとって、大学選びや出願プロセスは大きな悩みの種となります。今回は、フィンランドのインターナショナルスクールでIBを取得し、現在はカナダの名門・トロント大学(University of Toronto)で学ぶ春名さんにインタビューを行いました。「なぜヨーロッパではなくカナダを選んだのか?」「出願時の落とし穴とは?」など、実体験をもとに多くのリアルなお話を伺いました。

トロント大学について

トロント大学(University of Toronto)は、1827年に設立されたカナダ・オンタリオ州にある州立大学です。世界大学ランキングでも常に上位にランクインするカナダ最高峰の研究機関であり、北米を代表する名門校の一つです。キャンパスは、トロントのダウンタウンに位置する歴史ある「セントジョージ(St. George)」、自然豊かな「ミシサガ(Mississauga)」、そして「スカボロー(Scarborough)」の3つに分かれています。カレッジ制を採用していることでも知られ、多様な学部・専攻と柔軟なカリキュラムが特徴です。ß

インタビュイーのプロフィール

所属大学  University of Toronto (St. George Campus)
所属学部・専攻 Faculty of Arts & Science
Major: Industrial Relations & Human Resources
Minor: Statistics, Sociology
受験大学 (併願校) University of British Columbia (UBC) 他、カナダ国内の大学
出身高校 フィンランドのインターナショナルスクール
IB選択科目・スコア HL:English A Lit (6), Psychology (6), Visual Arts (6)
SL: Japanese A Lit Self-taught (6), Biology (6), Math AI (7)
Total: 39点

トロント大学受験体験談: 大学選び編

欧州・米国ではなく「カナダ」を選んだ現実的な理由

フィンランドでIBを取得後、そのまま欧州に残るのではなく、北米(カナダ)を目指した理由は何ですか?

一番の理由は、学びたい分野の言語環境です。私は社会学などの文系科目を学びたかったのですが、当時滞在していたフィンランドの大学では、英語で開講されている学位プログラムは理系科目(STEM)ばかりで、文系科目はフィンランド語が必須でした。フィンランド語は話せなかったので現地に残る選択肢はなく、インターナショナルスクールで培った英語力を活かして多様な文化に触れたいという思いから、北米の大学を目指すことにしました。

非英語圏の国でIBを取得する場合、「大学の授業が英語で行われるか」が重要なチェックポイントとなります。春名さんのように「文系科目の英語学位がない」というケースは欧州の一部の国でよく見られます。志望学部と言語要件の確認は、国選びの初期段階で必須です。

北米の中でも「カナダ」を最終的な進学先に選んだ決め手は何でしたか?

北米への憧れが強かったので、最初はアメリカも検討していました。しかし、学費の高さや当時の治安情勢を考えると、安心して生活できるか不安がありました。カナダは北米の環境でありながら治安が比較的良く、学費もアメリカに比べれば抑えられます。イギリスやオーストラリアは距離的な問題もありましたが、何よりイギリスの大学はIBスコアに対する要求が厳格という印象があり、当時の自分の英語力やスコアへの自信のなさから、より包括的に見てくれそうなカナダを選びました。

「イギリスの大学はIBスコアに対する要求が厳格」ということでしたが、具体的にどのような点を懸念していましたか?

イギリスの大学は「HLのこの科目で7を取ること」や「合計何点以上」といった条件が明確に設定されることが多いです。私はFinal Examで確実にその点数が取れるかどうかのプレッシャーに耐えられるか不安でした。もしスコアが届かずに合格取り消しになったらどうしよう、という恐怖があったので、IBスコアだけでなく課外活動なども含めて評価してくれる傾向があり、条件付き合格の基準も比較的緩やかだと言われているカナダの大学の方が、精神的に安心して受験できると考えました。

これはイギリスかアメリカを選択する大きな決め手の一つになります。イギリスはアカデミックなスコア要件が厳格な一方、北米は総合的な評価をする傾向があります。春名さんのように、Final Exam一発勝負のリスクを回避するために出願国を選ぶというのも、立派な受験戦略の一つと言えます。

都市型キャンパス「セントジョージ」を選んだ理由

トロント大学には3つのキャンパスがありますが、メインの「セントジョージキャンパス」を強く志望した理由は何ですか?

私は日本でもフィンランドでも比較的田舎の方で育ったので、「大学生活は栄えている都会で送りたい!」という強い希望がありました。セントジョージキャンパスはトロントのダウンタウンにあり、最も歴史があり学生数も多いメインキャンパスです。多様なバックグラウンドを持つ人と関わるには最適だと思いました。他の2つの郊外キャンパス(ミシサガ、スカボロー)は奨学金が出やすいといったメリットコミュニティの親密さはあると聞いていましたが、周りに何もない環境よりも、刺激の多い都市部での生活を優先してセントジョージ一択で出願しました。

トロント大学とUBC(ブリティッシュコロンビア大学)の両方に合格されましたが、最終的にトロント大学を選んだ決め手は何でしたか?

最後まで迷いましたが、決め手は「学部の柔軟性」「立地」です。UBCの社会学部はカリキュラムがカチッと決まっていて、専門に特化している印象でした。一方、トロント大学のFaculty of Arts & Scienceは、入学後に専攻を柔軟に変えたり、私のように複数の分野(HR、統計、社会学)を組み合わせたりすることが容易だと感じました。また、やはり「大都市に住みたい」という自分の希望を叶えられるのがバンクーバーよりもトロントのダウンタウンだったので、トロント大学を選びました。

トロント大学の受験体験談: 受験準備・受験編

成績重視のトロント大 と 人物重視のUBC

トロント大学(Arts & Science)とUBCの出願において、求められる書類や評価基準にどのような違いを感じましたか?

トロント大学は、基本的に「成績一本勝負」という印象でした。過去数年間の成績表(Transcript)とPredicted Gradesを提出するだけで、エッセイや面接はありませんでした。一方で、UBCは成績に加えて「Personal Profile」という書類が必要で、リーダーシップ経験や課題解決の経験について記述する項目が5つほどありました。トロント大は成績重視UBCは人物面も含めたアメリカの大学に近い総合評価という違いを肌で感じました。

同じカナダのトップ校でも、学部によって求められるものが大きく異なります。特にトロント大学のArts & Scienceがエッセイ不要である点は、エッセイ作成に追われるIB生にとっては負担減になりますが、裏を返せば「IBのスコア(成績)が合否に直結する」ということでもあります。

パーソナルステートメント(志望動機書)等のエッセイは、どのような内容を記述しましたか?また、作成にあたり誰かに添削を依頼しましたか?

UBCや奨学金の申請エッセイでは、主に課外活動でのリーダーシップ経験や、IBのEEのテーマについて書きました。「あなたはどのような人物か」という問いに対し、具体的なエピソードを交えてアピールしました。作成にあたっては、学校のカレッジカウンセラー(進路指導の先生)とマンツーマンで何度も推敲を重ねました。自分だけで完結させず、客観的な視点を入れてもらうことは非常に重要だったと思います。

【重要】全額免除奨学金への応募が生んだ「まさか」の結果に

トロント大学への出願時、奨学金の申請を行いましたか? 奨学金にまつわる体験談について教えてください。

ここが一番の反省点なのですが、私は高校からの推薦が必要な「全額免除の奨学金(Lester B. Pearson Scholarshipなど)」に応募しました。しかし、この奨学金に応募すると、出願者全員が自動的に審査対象となる「成績優秀者向けの入学奨学金(Automatic Entrance Scholarship)」の対象から外れてしまう仕組みだったんです。つまり、全額免除の奨学金に落ちてしまうと、部分的な奨学金をもらえるチャンスも同時に失ってしまい、結果として「0か100か」の勝負になってしまいました。

結果として、奨学金の結果はどうなりましたか?これから出願する後輩へのアドバイスがあれば教えてください。

結果として、全額免除の奨学金は不合格となり、トロント大学からは一切奨学金をもらえませんでした(UBCからは奨学金のオファーを頂きました)。もし全額免除の方に応募していなければ、IBスコア的にEntrance Scholarshipをもらえていた可能性が高かったと後で知り、とても悔しい思いをしました。後輩の皆さんには、奨学金の制度や併願の可否を事前によく確認し、リスクを計算して戦略を立てることを強くお勧めします。

これは非常に貴重かつ重要な情報です。「ダメ元で大きい奨学金に応募しよう」という選択が、確実にもらえたはずの奨学金を放棄することに繋がるケースがあります。大学ごとの奨学金規定の細かい文字まで読み込むことの重要性が分かります。

コンディショナルオファーと単位認定

合格通知が届いた時期はいつ頃でしたか?また、早期にオファーをもらうために意識したことはありますか?

私はDP2の10月頃から出願準備を始め、11月には書類を全て提出しました。その結果、2月には合格通知が届きました。周りの友人を見ても、書類を早く提出した人ほど早くオファーをもらっている傾向がありました。逆に遅い人は5月頃まで結果を待っていたので、精神的な安定のためにも、Predicted Gradesが出たらすぐに提出できるよう、早め早めに動くことが大切だと思います。

カナダの大学の「コンディショナルオファー(条件付き合格)」には、具体的なIBスコア条件が明記されていないこともあるようですが、最終試験に向けてどのようにモチベーションを維持しましたか?

そうなんです。イギリスのように「何点取れ」と書いておらず、「現在の学業成績を維持すること(Maintain academic standing)」という曖昧な条件だったので、逆に「何点下がったら取り消されるの?」と不安でたまりませんでした。大学に問い合わせても「極端に下がらなければ大丈夫」といった返答でしたが、怖かったので「絶対にPredicted Gradeより下げない!」という気持ちでFinal Examまで勉強を続けました。結果、自己ベストに近い点数を取ることができました。

IBのスコアによる大学の単位認定はありましたか?

はい、IBの単位認定制度はとても充実していました。私はHL科目のスコアのおかげで、1.5単位(およそ3科目分相当)が自動的に認定されました。卒業に必要な20単位のうちの1.5単位を最初から持っている状態なので、履修計画に余裕ができたり、少し早く卒業できる可能性があったりと、IBを頑張ったご褒美として非常に助かっています。

実際にトロント大学で大学生活を過ごして

学部選びの自由度とダブルメジャー・マイナー制度

入学時は学部を固定せず、2年次から専攻を決定するシステムについて、どのようなメリットを感じていますか?

1年次は専攻を決めずに、統計学、社会学、心理学、コンピュータサイエンスなど、文系理系問わず幅広く授業を履修しました。元々は教育に関心があったのですが、実際に大学の授業を受けてみて「教育学部ではないな」と気づくことができました。もしイギリスのように入学時点で専攻が固定されていたら、ミスマッチに苦しんでいたかもしれません。1年間かけて自分の興味を見極められるこのシステムは、私のように好奇心旺盛なタイプには合っていたと思います。

現在の専攻(Industrial Relations & Human Resources)と副専攻(統計学・社会学)の組み合わせは、どのように決定しましたか?

2年次から専攻(Major)を決めるのですが、私は「Industrial Relations & Human Resources(労使関係・人事)」をメジャーにし、「統計学」と「社会学」の2つをマイナー(副専攻)にする形を選びました。社会学だけでなく、IBで好きだった数学の延長で統計学も学びたいと思い、これらを組み合わせられる柔軟性が魅力でした。トロント大ではダブルメジャーにする学生も多いですが、私は幅広くバランスよく学びたかったのでこの構成にしました。

文系のメイン専攻に、理系的な「統計学」を副専攻で組み合わせられるのは、北米のリベラルアーツ教育ならではの強みです。IBで幅広い科目を学んだ経験が、こうした学際的な専攻選びに活きている好例ですね。

大学の学習スタイルとIBとのギャップ

大学での学習形式について教えてください。また、学習量はIB時代と比較してどのように変化しましたか?

授業は大人数の講義と、少人数で議論や演習を行うセミナーの組み合わせが基本です。例えば週4時間の授業なら、2時間が講義で残りがセミナーといった感じです。学習量に関しては、正直IB時代よりも増えました。IBも大変でしたが、大学ではリーディングの量も膨大ですし、私は数学系の科目も取っているので課題も多く、1年次は平日も休日も図書館にこもって勉強漬けの日々でした。

IBで学んだスキルや学習内容は大学の授業で役立っていますか? 逆に、IBと大学の学びで「求められるスキルの違い」を感じる点はありますか?

IB Psychologyの知識は大学の心理学の授業でも内容が被っており、非常に役立ちました。また、統計学を専攻しようと思えたのはIB Math AIでの学びが楽しかったからです。一方で、スキルの違いも感じます。IBでは「クリティカルシンキング」や「答えのない問い」を深く考えることが重視されましたが、大学では「正確に問題を解く」「正解を導き出す」スキルが求められる場面も多く、そのギャップに最初は戸惑いました。ただ、IBで培った基礎があるからこそ対応できていると感じます。

受験生へのメッセージ

マンモス校であるトロント大学での人間関係構築や、日本人学生のコミュニティについて教えてください。

トロント大学は学生数が非常に多いうえ、授業ごとに受けるメンバーが違うので、自分から動かないと浅い関係で終わってしまいがちです。その中で、「トロント大学日本人学生会」のようなコミュニティは心の支えになっています。就職活動のセミナーや運動会などのイベントがあり、有益な情報を共有したり、日本語で話してリラックスしたりできる貴重な場所です。私はフィンランド時代は日本人が少ない環境だったので、こうしたコミュニティの温かさを改めて感じています。

最後に、海外大学を目指すIB生の後輩に向けて、アドバイスをお願いします。

ウェブサイト上の綺麗な情報だけでは分からない「大学のリアル」を知ることが重要です。私自身、実際にキャンパスに行けなくても、大学が開催するZoomでのオンラインセッションに参加したり、先輩に話を聞いたりすることで具体的なイメージを掴むことができました。特にIB生は忙しいと思いますが、積極的に「生の声」を聞きに行くアクションを起こしてください。それが後悔のない大学選びに繋がると思います。