【IB受験体験談】ミネルバ大学・パリ政治学院 (Sciences Po) 合格体験記! IBスコア38点でミネルバ大学へ!

今回は、世界最難関とも言われる「ミネルバ大学(Minerva University)」に在籍するIB卒業生、山内さんへのインタビュー記事をお届けします。日本の高校からUWCアトランティックへ進学し、フランスの名門「パリ政治学院 (Sciences Po)」やイギリスのトップ校「UCL」などにも合格しながら、最終的にミネルバ大学を選んだという山内さん。「なぜ他の名門校ではなくミネルバだったのか?」「入試の裏側は?」など、海外進学を目指すIB生の進路選択に役立つ、リアルな体験談をお届けします!
ミネルバ大学について
ミネルバ大学は、2014年に開校したアメリカの大学です。「特定のキャンパスを持たず、世界7都市を移動しながら学ぶ」という革新的なカリキュラムで知られています。学生は4年間でサンフランシスコ、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北(※年によって変更あり。現在は東京も拠点の一つ)を移動し、全授業をオンラインのセミナー形式で行います。合格率は常に1〜2%未満とされ、ハーバード大学などのアイビーリーグよりも狭き門として有名です。SATなどの標準テストよりも、独自の思考力テストや高校時代の課外活動をかなり重視する入試スタイルをとっています。
インタビュイーのプロフィール
今回お話を伺ったHさんのプロフィールです。
| 所属大学 | ミネルバ大学 (Minerva University) |
|---|---|
| 受験大学 (併願校) | パリ政治学院 (Sciences Po), UCL, SOAS, King’s College London |
| 出身高校 | 日本国内の高校 → UWC Atlantic College (イギリス) |
| IB選択科目・スコア | HL: Global Politics (6), Anthropology (7), Math AA (6) SL: Spanish ab (5), Japanese A SSST (6), ESS (6) Total: 38点 |
| これまでの教育歴 | 日本の公立小 → 都内私立中学校・高校 → 高2でUWCへ留学 |
ミネルバ大学の受験体験談: 大学選び編
日本の高校からUWC(イギリス)へ進学し、そこで「政治学」を専攻しようと決意した経緯を教えてください。
もともと日本の高校にいた頃から模擬国連の活動をしていて、国際政治への関心が高まっていました。UWC進学後、IBの科目として実際に「Global Politics」を履修してみたらすごく面白くて。「あ、私はこれがやりたいんだ」と確信し、大学でも政治学を専攻することを決めました。IBの科目がそのまま大学での学問選びの指針になった形です。
模擬国連のような課外活動での興味を、IBの科目(Global Politics)で学問として深め、それを大学の専攻へと繋げる。この一貫性は海外大学出願において非常に強力なストーリーになりますね。
8校しか出願できないUWCの制約を踏まえた出願戦略について
UWC特有の「出願は8校まで」という制約の中で、どのように併願校の組み合わせを決定しましたか?
UWCでは出願校が8校までという厳しい制限がありましたが、イギリス(UCAS)は5校受けても「1カウント」とされるので、イギリスはマストで受けることにしました。残りの枠で「政治学が強い大学」を探した時、ハーバードの次に政治学で有名なフランスのパリ政治学院 (Sciences Po)は外せないなと。ミネルバ大学は中学時代にテレビで見て「面白い学校がある」とずっと頭の片隅にあったので、運命を感じて出願枠に入れました。
アメリカの一般的な大学ではなく、あえて「ミネルバ大学」と「パリ政治学院 (Sciences Po)」を第一志望群に据えた理由は何ですか?
当時の私は少し尖っていて、フラタニティ(社交クラブ)があるような「典型的なアメリカの大学生活」を送りたくないと思っていました(笑)。学費の高さもネックでした。パリ政治学院 (Sciences Po)は政治学を学ぶには最高の環境だと思っていましたし、ミネルバは「特定のキャンパスがない」という特殊性が自分の性格に合っていると感じました。一般的な「大学ランキング」だけでなく、自分の肌に合うかを重視しました。
ランキング上位校を闇雲に受けるのではなく、「自分の性格(典型的なキャンパスライフを望まない)」や「学びたい分野(政治学)」に基づいて志望校を絞り込んでいる点が印象的です。IB生は世界中が選択肢になる分、こうした「自分軸」が重要になります。
大学の受験体験談: 出願・対策編
ミネルバ大学の出願・対策
ミネルバ大学の出願プロセスは非常にシンプルだと伺いました。具体的にどのようなステップで進みましたか?また、SATなどの標準テストは必要でしたか?
ミネルバの出願は本当にシンプルで、SATも不要です。Common Appのような長文エッセイもなく、基本情報を登録したら、次に「6つのAccomplishment(達成事項)」を詳細に記述します。その後は独自のオンラインテストを受けます。数学、思考力、ライティング、創造性、そして面接形式のスピーキングテストがあり、これらが終われば出願完了です。
合否の鍵を握ると言われる「6つのAccomplishment(達成事項)」には、具体的にどのような活動を書きましたか?また、記述する際に工夫した点(誇張しすぎない等)はありますか?
私が書いたのは「模擬国連」「学校内の東アジアコミュニティのリーダー」「インターンシップ」「チャリティレストランの運営(シェフ担当)」「演劇」などです。工夫した点は、自分を大きく見せようとして難しい言葉を使わないことです。正直に、誰が読んでも活動内容とそこから得たスキルが伝わるよう、「分かりやすく書く」ことを徹底しました。
海外大出願では「自分を売り込む」ことが重要視されがちですが、ミネルバにおいては「等身大の事実を論理的に伝える力」が評価されるようです。活動の多様性(リーダーシップから料理まで)も評価ポイントだったのかもしれません。
独自のオンラインテストや、面接にはどのように対策して臨みましたか?
実はあまり対策できていなくて…(笑)。ただ、ポータルサイトに練習問題(Practice Test)があったので、そこで設問形式や時間配分だけは確認しました。スピーキングテストと書いてあったので気楽に構えていたら、実際には画面越しに質問に答える「面接」のような形式で驚きました。これから受ける人は、即興で自分の考えを話す練習をしておくと良いと思います。
パリ政治学院 (Sciences Po) の出願・対策
パリ政治学院 (Sciences Po) の出願書類は非常に重いと聞きます。具体的にどのようなテーマのエッセイが課され、どのように準備を進めましたか?
パリ政治学院 (Sciences Po) は書類がとにかく大変でした。趣味や市民活動の記述に加え、2500〜3000文字程度のエッセイが複数ありました。「ハードワークをどう評価するか」「文学作品を一つ選び、自身の成長とどう関連するか」「社会問題を見る目を変えた著者は誰か」といった哲学的で重い問いばかりで、準備には相当なエネルギーを使いました。
IBの課題(IA/EE)と出願準備の両立
UWCでのIA・EEの提出時期と大学出願のピークが重なり、非常に多忙だったと伺いました。この3ヶ月をどのように乗り越えましたか?
本当に地獄でした。私の学校はIAとEEの提出期限が9月から12月に集中していて、ちょうど大学出願のピークと重なってしまったんです。マネジメントのコツなどと言えるような余裕はなく、正直「根性」で乗り切りました(笑)。寝る時間を削って、ひたすら書いては出す、を繰り返す3ヶ月間でしたね。
多くのIB生が直面する「Final Yearの秋の忙しさ」は想像を絶します。EEやIAは早めに終わらせられるなら、夏休み中に目処をつけておくのが鉄則と言えそうです。
大学の受験体験談: 入試本番編
教授2名と対峙する1時間のオンライン面接
パリ政治学院 (Sciences Po) の面接は「最初の20分で絵画分析を行う」という独特な形式ですが、実際にはどのような絵が出題され、どう回答しましたか?
教授2名とのオンライン面接で、最初に2枚の絵が提示され、どちらかを選んで分析します。私が選んだのは「19世紀スウェーデンの大通り」の絵でした。男性は黒いコートを着ているのに女性はほとんど描かれていない点に着目し、「当時のジェンダー観」を指摘しました。現在の北欧はジェンダー平等の先進国ですが、当時は違ったという対比を用いながら、政治・社会的な背景を考察して話しました。
その後の質疑応答では、どのような観点から深掘りされましたか?
絵画分析の後の40分間は、志望動機や学びたいことについての質疑応答でした。私が「アジアとアメリカの関係」を副専攻で学びたいと書いていたので、それに関する知識や考えを深く問われました。自分の出願書類に書いたことについては、どんな角度から聞かれても答えられるよう準備が必要です。
絵画分析はTOKの応用とも言えます。「何が見えるか」だけでなく「背景に何があるか」を知識と結びつけて論じる力は、IBで鍛えられるスキルそのものです。
【進学決定とその後】世界7都市を巡るミネルバ大学での学び
なぜ「第一志望」だったパリ政治学院 (Sciences Po)を辞退し、ミネルバを選んだのか
アカデミックな評価が高いパリ政治学院 (Sciences Po) のオファーを蹴ってまで、最終的にミネルバ大学への進学を決めた「決め手」は何でしたか?
パリ政治学院 (Sciences Po) はアカデミック重視で、リサーチを突き詰める学校です。一方、ミネルバは世界を巡り、各都市の社会問題にプロジェクトとして取り組む実践重視の学校です。私は政治学に興味はありましたが、「その知識を使って具体的に何を解決したいのか」がまだ見えていませんでした。だからこそ、まずミネルバで世界を見て「自分がアプローチしたい課題」を見つけるのが先決だと思い、進学を決めました。
入学前に抱いていたイメージと、実際のミネルバでの授業(オンライン・独自システム)にギャップはありましたか?
オンライン授業=受け身、というイメージが良い意味で裏切られました。ミネルバ独自のシステムでは、学生の発言量が記録され、教授から全員の顔が見えるため、サボるとすぐにバレます(笑)。「常に見られている」という緊張感があり、対面授業以上に集中して参加するようになりました。膨大な予習(リーディング)が前提の授業なので、準備不足だと議論に全くついていけません。
IBで培った「分野横断的な学び」や「IAでの探究経験」は、現在のミネルバでの学習にどう活きていますか?
すごく活きています。IBの理念である「バランスの取れた人材」や科目間の繋がりを考える思考法は、ミネルバの「システム思考(Systems Thinking)」と非常に親和性が高いです。また、IAで「自分で問いを立ててリサーチし、アウトプットする」経験を積んでいたおかげで、ミネルバの探究的な課題にもスムーズに適応できていると感じます。
「IBとミネルバは相性が良い」という話はよく耳にしますが、特に「自律的な学習姿勢」と「分野横断的な視点」において、IB生は大きなアドバンテージを持っているようです。
ミネルバ大学の学費事情と奨学金 (笹川平和財団)
ミネルバ大学の学費や、Financial Aid(奨学金)の申請について教えてください。
ミネルバの学費は年間約700万円程度で、他の米私立大よりは抑えめです。何より重要なのは、合否に家庭の経済状況が影響しない「Need-blind」制度であり、合格後に財政支援(Need-based Financial Aid)を申請できます。日本人の場合、笹川平和財団の奨学金対象校にもなったのでチャンスは広がっています。私はダメ元でも必ずFinancial Aidには申請すべきだと思います。結果として多くの学生が何らかの支援を受けていますから。
これから世界を目指すIB生へ
最後に、IBの勉強と海外大学受験を控える後輩たちへ、スコアメイクや大学選び、そして高校生活の過ごし方についてメッセージをお願いします。
IBのスコアや大学受験はもちろん大切ですが、高校生活の2年間を「IBのためだけ」に費やしてほしくないです。勉強以外にも、友達と遊んだり、自分が心から楽しいと思える活動に打ち込んだりしてください。そうした経験が、結果としてエッセイの深みや人間としての魅力に繋がると思います。IBスコアは大事ですが、それだけで人生が決まるわけではないので、ぜひ高校生活を楽しんでください!












