理系科目のEEはどのように進む? テーマ決めや実験、草稿完成の目安など2年間の体験談を紹介!
DPの象徴的な科目の一つに、約8000字の論文をDP2年間をかけて書き上げるExtended Essay (EE) があります。EEでは、論文の執筆に加えて探究テーマの調査・決定、先行研究の調査などより良い論文に仕上げるためにやるべきことが多くあります。今回は筆者が実際に執筆した理系 (物理) EEの2年間の流れについて、筆者の体験談をベースに紹介していきます。理系のEEと文系のEEでは大きく進め方が異なることに加えて、学校や選択科目によって大きく差があるので、今回は理系科目を選択した場合のあくまで一例であることにご留意ください。
EE2年間の概観
初めに、理系EE2年間の大まかなスケジュールを見ていきます。
この記事では、EE関係の行事に加えて、EEに取り組む上でやるべき項目を「先行研究系」「実験系」「執筆系」の3つのジャンルに分けて紹介していきます。各項目の具体的な内容は以下に示す通りです。
- 先行研究系: 論文を書くにあたり必要な情報を先行研究を用いて調査する作業です。大まかな研究の方針から具体的な研究方法を決定するために既に完成された論文を読むことで多くのヒント・知見を得ることが出来ます。
- 実験系: 理系EEの根幹ともいえる実験について、まず実験方法や具体的にどのような手順で実験を進めるかといった実験手法について調査します。その後実験を行い、実験結果をもとにデータを分析していきます。
- 執筆系: 名前の通り、論文を書き進める作業です。論文の執筆に加えて、後述するRPPFの記入もこの項目に含めています。
DP1 (高2) のスケジュール
高2の段階で70%ほど研究及び執筆が完了しているイメージです。EEは他の科目と独立しているので、授業の進行度に関わらず進めることが出来ます。テーマや実験についての調査を順調に進めて、高2のうちに3000字程度の執筆を完了できるペースだと良いでしょう。
DP2 (高3) のスケジュール
EEの提出は、学校によって差がありますが、おおよそ8月末から9月となっています。最終試験よりも1か月から2か月以上早めとなっているので、とても「あっという間」な感覚かと思います。高2で進めてきたベースをもとに作業を進め、夏休み中に完成させることが出来れば非常に良いでしょう。
DP1 (高2) 4月 ~ 6月
それでは、それぞれのスケジュールについて細かく見ていきましょう。
探究テーマの調査・テーマ決定
DPが始まり、まずEEとして取り組むのは探究テーマの調査および決定です。執筆する科目を選び、具体的にどのようなリサーチクエスチョンで研究を進めるかを5月ごろまでに決められると有利に進めることが出来るでしょう。
科目・探究テーマの決め方
EEにおいて、科目と探究テーマは非常に重要です。良いテーマであることが、良い論文を書き上げるための必要条件となるので、きちんと調査や相談をしながら決めましょう。科目やテーマに迷った際は、まず自分の好きな科目で考えてみてください。好きな科目の中で好きな単元、その中でもさらに好きなトピック、というように、どんどん自分の興味のある分野に絞っていくことも方法の一つです。加えて、学校の各科目の先生への相談も積極的に行いましょう。
先行研究の調査開始
テーマが決定したら、次は先行研究の調査に取り掛かります。関連する文献や過去の研究成果について、Google ScholarやCiNiiなど文献サイトを用いて調べてみましょう。現在は、図書館等へ出向かずともインターネット上でこうした論文にアクセスすることが出来るので効率的に調査することが出来ます。多くの先行研究を調べて、自分の研究の方針をより具体的にしていきましょう。
DP1 (高2) 7月 ~ 9月
実験手法についての調査
理系のEEでは、実験が論文における自分の主張に直接的につながるため、実験はEEの根幹と言えます。より良い結果を得て、良い分析を行えるようにするためにも、早めにどのような実験を行うかを決めておくことが重要です。先行研究を調査しながら決めていきましょう。
論文の章立て・目次案の作成
ある程度の調査が進んだら、論文の大まかな章立てや目次を作成していきます。既に書かれてある理系の論文における章立て等を参考にしながら、自分はどのような目次で書いていくかを決めます。EEの指導の手引きも参考にしながら決めていけると良いでしょう。
DP1 (高2) 10月 ~ 12月
面談の実施
高2の10月には、初めてとなるスーパバイザーの先生との面談があります。この面談はIBで正式に行うように定められているもので、面談実施後にはRPPFというものに、これまでの進捗状況と面談内容について記述します。1回目の面談では、これまでの調査内容についてや現時点で考えている研究の方向性について共有します。面談を有意義なものと出来るように、きちんと研究を進めた上で面談を行うようにしましょう。
ここで、IBで定められている面談でしか先生とはEEについて相談できないのかと心配に感じた方がいるかもしれません。私の学校では、この面談以外にも何回か先生とEEについて相談する機会が設けられていたので、各学校の先生に伺いましょう。
RPPF記入
前述したように、先生との面談実施後にはRPPFを記入します。面談から日が経つにつれて、面談で話したことを忘れてしまい、書きづらくなってしまうので、面談後すぐに書くようにしましょう。書いたRPPFはスーパバイザーの先生にチェックをもらい、サインを書いてもらう必要があるので忘れないように行いましょう。
実験手法の決定・実験計画の策定
そして、これまでの調査内容をもとに実験方法を決定します。既に知られている実験方法をそのまま行う形でも、自分流に少しアレンジした実験方法で行う形でも問題ありません。実験方法が決まったら、どのタイミングでどの実験を行うか等のスケジュール決めを行ったり、具体的な実験方法についてまとめていきます。実験手順や実験に必要な機材等をまとめた「実験計画書」を作成することをお勧めします。
引用文献リストをまとめておく
高2の11月になると、ここまでの研究で多くの文献を利用してきたことと思います。研究にあたり参考にした文献は全てEEに参考文献として記述する必要があるので、今のうちから利用した文献をまとめておきましょう。私の学校では、APAスタイルで文献を記述すると定められていたので、APAスタイルにしたがってまとめていました。各学校で定められている書式にしたがってまとめましょう。
DP1 (高2) 1月 ~ 3月
EEの中間発表
学校によって中間発表がない学校もありますが、私の学校では、高2の2月ごろにEEの中間発表会がありました。中間発表は、クラスメイトや先生方から、これまでのEEの取り組みについてのフィードバックを得られる貴重な機会です。この中間発表までに、研究の方針が定まり、序論の執筆に取り掛かれていると良いペースで進められていると言えるでしょう。
予備実験の実施
これまで進めてきた実験計画に基づいて、実験を正しく行えるか、正常にデータを得られるかを確認する予備実験を行います。ぶっつけ本番で実験を行ってしまうと、実験計画の問題点や課題に気づくことが出来ずにリスキーなので、必ず予備実験を行いましょう。必要があれば、予備実験の結果をもとに実験計画を練り直してより良い実験と出来るように修正を行います。
3000字の草稿執筆
これまでの研究内容をもとに、ついに本格的な草稿の執筆に取り掛かります。この段階では、研究の骨組みを固めつつ序論や仮説、実験計画などについて執筆をしていきます。高2のうちに3000字の草稿を完成させられると、高3でかなり有利に進めることが出来るので、このペースで進められるように頑張りましょう。
DP2 (高3) 4月 ~ 6月
今までの調査の再確認
高3に入り、まず初めにこれまで進めてきた調査や研究内容を再確認します。文献リストに漏れがないかどうかの確認も行いましょう。不備や不足があれば、速やかに修正を行いましょう。また、再度テーマについての方向性が合っているかも見直すことも重要です。
実験の実施・再実験の実施
高3の4月には、いよいよ本格的な実験を行います。予備実験を踏まえ、最終的な実験計画に従ってデータを収集し、結果を分析していきます。場合によっては、再実験が必要となることもあるので、早め早めに行動しておきましょう。論文内ではデータの信頼性についても言及する必要があるので、このことも念頭に入れながら実験を行い、データを記録しておくことが重要です。
8000字へ発展した草稿の作成
実験が終了した後は、3000字の草稿をさらに発展させて8000字の最終草稿を目指して執筆を進めます。実験結果や考察を加え、結論部分までしっかりと書き上げることが重要です。
表紙の作成
内容が完成したら、次は表紙を作成します。表紙には、科目名やリサーチクエスチョンなどといった、規定された情報を記載します。学校によってフォーマットが指定されていることが多いため、これに従って作成しましょう。
DP2 (高3) 7月 ~ 10月
完成版の作成・推敲
7月から10月にかけて、いよいよEEの最終段階に入ります。完成版の作成と推敲を行い、細かい部分まで内容を磨き上げます。誤字脱字の確認や、文献リストの正確性、全体の構成が論理的に一貫しているかなどを細かくチェックし、完璧な形に仕上げましょう。
EE提出
いよいよEEを正式に提出します。学校によって提出期限は異なりますが、私の場合は8月末が提出期限でした。事前に焦ってしまうことのないように、余裕をもって最後の仕上げを行いましょう。
最終面談の実施
EEは、完成版の提出を行ってもまだ終わっているわけではありません。最後に、スーパーバイザーの先生との最終面談が残されています。EEの成果や自分自身の成長について振り返りを行い、RPPFに記入して提出します。これが完成すると、ついにEEが完了したことになります!
最後に
理系科目のEE2年間はこのようなスケジュール・流れとなっています。どのように研究を進めていけば良いのか、どのようなスケジュール感で進めるべきかが参考になれば幸いです。本文でも繰り返し述べたように、EEでは早めの準備と計画的な進行が非常に重要です。高校生の時点で論文を仕上げることは大きな挑戦となりますが、EEで得られるスキルや知識は、多くが将来にわたって役立つものだと感じています。