IBDPで培ったATLスキルは大学生活でどのように活かされる? 実際にDPを学んだ生徒の声をもとにIBの学びがどう役立つかを解説!

IBの授業は、一般的なカリキュラムに比べてプレゼンテーションやグループワーク、ディスカッションなどを行う機会が多く、生徒が主体となって進める学びのスタイルとなっています。そんな特徴的な学びだからこそ、DP2年間を通して幅広いスキルを身に着けることが出来ます「IBは課題や試験が多くて寝る暇もないほど大変」と聞くけど、「それだけ苦労して本当に将来に役立つの?」と不安に思う方もいるかもしれません。今回は実際にDPを修了した先輩たちへのアンケート結果をもとに、IBDPの授業を通じて培えるスキルが大学生活でどのように活かされるのかを具体的に解説していきます。

IBの教育で大切にされているATLスキルとは?

IBの授業では、ATL (Approaches to Learning) スキルという言葉が重視されており、シラバスや教科書でも多く言及されています。ATLスキルは名前の通り、学習を進めるうえで必要な「方法」や「姿勢」に関するスキルのことです。単に知識を詰め込むのではなく、世界中のあらゆる場面で応用できるような思考力やコミュニケーション力を育むために、以下の5つのスキルが大切にされています。

コミュニケーションスキル

IBの授業では、ディスカッションやプレゼンテーションが多い分、生徒同士や先生とのコミュニケーションを通じて自分の意見を発信する力が磨かれます。英語でのやり取りに慣れる機会も多いため、自分の考えを躊躇なく伝える態度も自然と身につきます。

社会的スキル

グループワークや共同作業など他者と協力する機会を通じて、自然と協調性やリーダーシップ、対人関係力を養うことができます。異なる考え方や文化的背景を持つメンバーとの作業を通して、意見をまとめたり役割分担を行ったりといった社会的スキルが身につきます。

リサーチスキル

エッセイや内部評価(IA)などで多角的な情報収集と分析を求められるため、適切な文献を探す力や資料を批判的に読み解く力が自然と育まれます。歴史的背景や社会的背景を踏まえて物事を捉える習慣が身につきます。

自己管理スキル

IBでは、CASのアクティビティや日々の学習、大学受験勉強までさまざまなタスクを同時並行で行わなければならず、常に優先順位を考えながら取り組む習慣が求められます。こうした環境で過ごすうちに、自然とタスク管理や目標設定の能力が磨かれ、自分の行動を客観的に見直して計画的に進める力が身につきます。

思考スキル

IBでは、ただ答えを暗記するのではなく、常に「なぜそうなるのか」という問いを立てながら学習を進めていきます。物事を鵜呑みにせず、一度自分の中で噛み砕いてから考える習慣が身につくため、大学でも授業や研究においてより深い洞察が求められる場面で大きな強みになります。

今回はこのATLスキルに焦点を当てて、それぞれのATLスキルが、具体的に大学生活でどのように役立っているかを解説していきます。

DP修了生はどのATLスキルが大学生活で役立っていると感じているか?

まず、実際にIB修了生はどのATLスキルが特に大学生活で役立っていると感じているかを調査したアンケート結果を見ていきます。

「思考スキル」が約4割という高い割合を占めており、論文やレポートの作成、ディスカッションでの議論など、大学の学びに直結しやすい思考力が求められていることが読み取れます。次いで「コミュニケーションスキル」が約3割「自己管理スキル」が約2割と続き、大学生活で頻繁に行われるグループワークやプレゼン、課題の締切管理などで役立つと感じる学生が多いようです。

それぞれのATLスキルは大学生活でどう役立っているか?

それでは、それぞれのATLスキルが大学生活のどのような場面で具体的に役立つかを解説していきます。

思考スキル

前述のアンケート結果では、思考スキルが最も高い割合を示していましたが、筆者の感想としては意外に感じました。他のスキルと比べて概念がざっくりとしていますが、日常生活にも応用しやすいため、実際に役立っていると感じたIB生が多かったのではないかと推測します。

何事にも考える癖がつくようになった

IB時代に積み重ねた「常に疑問を持って考察する姿勢」は、大学だけでなく社会に出た際も多くの場面で役立ちます。ニュースや教科書の情報もすぐに鵜吞みにするのではなく、まずは一度考えてみるという癖がついているので、物事を多角的に捉えたり、客観的に評価することが出来るようになっています。

エッセイの執筆

エッセイやレポートを執筆する際は、教科書的な答えだけではなく、自分自身の考えを論理的に組み立てて伝える力が重要となります。段階的に議論を進めるアプローチや、根拠をしっかり示す書き方をすでに身につけている点は、大学でのエッセイやレポート課題をこなすうえで大きなアドバンテージです。

実際にアンケートで寄せられた声

  • ディスカッションをする時や、ニュース、リサーチペーパー等の情報を鵜呑みにせずに自分の意見を持てるようになった
  • 物事をそのまま受け入れるのではなく、一度自分の中で噛み砕いてよく考えてから物事を考えられるようになっている
  • 考える癖がついたおかげで、勉強の理解度も深まっている
  • 哲学や倫理、英語の授業などでのディスカッションの発展、プレゼンテーションのリサーチの深さ、そしてエッセイを書く際の分析力にとても役立っている
  • リサーチスキルが身についたことで、論文やレポートに必要な情報を上手く区別できるようになった

コミュニケーションスキル

コミュニケーションスキルは勉強の場ならず、日常生活からビジネスまで非常に多くの場面で重要になります。IBを通じてたくさん「人前で話すこと」を経験するので、それが大学生活においても強みになっていると筆者も強く感じます。

人脈づくり

大学では、多くの新たな出会いがありますが、自らが積極的に行動しないと人脈を広げることはできません。「大学の人間関係を築くうえで、英語での対話や初対面の人との雑談がスムーズにできるようになった」「物怖じせずに話しかけられるようになった」という声も多くあり、IBで培ったコミュニケーションスキルが大学生活での人脈づくりに繋がったと感じるIB生が多いようです。

授業でのディスカッションやグループワーク

また、大学でもグループワークやプレゼンテーションなど、他の学生や教員と意見を交わす機会が数多くあります。IB生は高校時代に数多くのグループワーク等を経験しているので、ディスカッションや発表をより高いレベルでこなすことが出来ていると感じているIB生が多いです。また、英語での文献読解やコミュニケーションにも抵抗がなくなるので、海外の文献を活用したり留学生と協働作業を行ったりする際もスムーズに進められるのが強みとなります。

実際にアンケートで寄せられた声

  • 英語での対話で他者と話す時に役立つ。知らなかった単語や身に覚えのない表現が少なくなった
  • 大学などで、レポートを書かなければいけない時にある程度の構成を立ててから話し始める癖がついた
  • 結論から書く効率的な書き方を身につけることができた。
  • 人に話しかけることに対して物怖じしなくなった

自己管理スキル

筆者がIBDPを通じて最も向上させられたと感じるスキルは自己管理スキルです。授業での学習に加えて、EEやIAなど様々な課題を同時並行で取り組むことでタイムマネジメントスキルを大きく伸ばすことが出来と感じています。

スケジュール管理・タイムマネジメント

大学生活では、学業に加えてアルバイトやサークル活動、さらにはインターンシップやボランティアなど、多くの予定が入るので、タイムマネジメントが非常に重要になります。IBで培ったスケジュール管理能力があれば、自分で計画を立てて勉強する習慣がすでに身についているため、余裕を持ってタスクを進められるのが大きなメリットです。特にCAS活動では、あらかじめ自分で設定したスケジュール計画に基づいて活動を進めることとなるので、この経験も大いに活かされます。

実際にアンケートで寄せられた声

  • IBではCASのアクティビティや部活と勉強の両立を効率的に考慮しなければならず、いろいろなことの優先順位を決めて物事を計画的に進める力がついた
  • どんなに能力があったとしても、それを自己管理や、グループプロジェクトの組織管理を通して発揮できることが大学授業・ゼミの重要点になって来ていると思う
  • IBDP試験のために自分で計画を立てて勉強することや受験対策を自分で行う中で、スケジュール管理能力が高まり、自立して行動できるようになった
  • 現在大学では一人暮らしをしており、自己管理スキルがかなり大事なので、IB時代に培ったスキルが役に立っていると感じる

リサーチスキル

リサーチスキルは、一般的なカリキュラムで学習した学生とIB生とで特に差が付きやすくなるポイントだと感じています。高校時代から、多くの論文に触れたり自らが論文を執筆したりする経験は大きな強みとなります。

期末レポートや研究

期末レポートや研究に取り組む際に、リサーチスキルが活かされたと感じるIB生が多いようです。IBでの経験を活かすことで、情報収集の段階から効率的に適切な資料を選ぶことができます論文の選び方や論文の読み方についても、IBの授業を通じて学習しているので、有利に調査を進めることが出来ます。

論文の執筆

学部3年生や大学院に進学すると、学会や専門雑誌への投稿を視野に入れた本格的な論文執筆が求められる場面も増えてきます。IBで学んだ「根拠に基づいた主張の組み立て方」「学術的な文献を批判的に読み解く姿勢」は、論文の構成を考えるうえで非常に役立ちます。すでに学部1年や2年の段階から、論文形式のレポートやリサーチペーパーに抵抗なく取り組めるため、アカデミックな文章に慣れるまでのハードルが低いのもIBの強みと言えるでしょう。

最後に

IBDPでは、単に知識を得るだけでなく、プレゼンテーションやグループワークなどさまざまな経験を通して「コミュニケーションスキル」「社会的スキル」「リサーチスキル」「自己管理スキル」「思考スキル」といったATLスキルを身につけることができます筆者はIB生時代、「ATLスキルを成長させよう」などと特に意識はしていませんでしたが、日々目の前のDPの勉強に取り組み続けたことで、最終的にはATLスキルを大きく成長させることが出来たと感じています。

このATLスキルは、大学生活における授業や研究はもちろん、課外活動やアルバイト、将来的には社会人としての活動においても大いに役立ちます。もちろん、課題や試験など少し忙しい面もありますが、IBDPを乗り越える過程で身につけた力は、将来に大きく繋がるはずです。IBへの進学を検討している方や、今まさに課題に追われている方は、是非一度ATLスキルを意識しながら学習に取り組んでみてください!