【IB受験体験談】トロント大学 Life Sciencesに合格したKさんにインタビュー!

今回は、カナダの名門・トロント大学のStudies in Life Sciencesに合格し、現在現地で学ぶKさんへのインタビューをもとに、その魅力とリアルな受験体験談をお届けします。
「世界ランキング上位のトロント大学に、IB生はどうやって挑めばいい?」
「海外での生活って実際はどんな感じなの?」
そのような不安を持つIB生の皆さんにとって、北米トップ大学への出願は、非常に高いハードルに見えるかもしれません。
この記事では、Kさんの体験談を通して、戦略的な大学選びの軸から、入学後のリアルな生活事情まで、他では聞けない情報をお伝えします。
トロント大学について
大学の特色
トロント大学は1827年に創立されたカナダ屈指の研究大学であり、世界大学ランキング(QS World University Rankings 2025)では世界29位、カナダ国内では1位にランクインしています。
キャンパスは、ダウンタウンにあるセント・ジョージ、西部のミシサガ、東部のスカボロの3つに分かれており、合計で現在約10万人の学生が学んでいます。留学生の比率は約3割と高く、世界160カ国以上から学生が集まる多文化な環境が特徴です。
トロント大学 Studies in Life Sciences について
Life Sciencesはトロント大学の中でも特に人気のあるプログラム群です。
最大の特徴は、「Subject POSt (Program of Study)」と呼ばれる履修システムです。入学時は「Life Sciences」という大きな枠組みで入学し、1年次に基礎科目を履修します。その成績や興味に基づいて、2年次進級時に具体的な専攻(Specialist、Major、Minor)を決定します。
これにより、「生物学と心理学のダブルメジャー」や「生命科学専攻+人文学副専攻」といった柔軟な学習計画が可能となります。
インタビュイーのプロフィール
今回インタビューに協力してくれたのは、現在、トロント大学Life Sciencesに通うKさんです。
| 所属大学・学部 | トロント大学 Life Sciences |
|---|---|
| 併願校 | カリフォルニア大学、NYU、ペンシルベニア大学など米国トップ校を中心に約20校 |
| 出身高校の区分 | 国内一条校 |
| IBスコア | 45点 |
| IB選択科目 | SL:Japanese A, English A, History HL:Math AA, Chemistry, Biology |
| TOEFL iBTのスコア | 116点 |
| これまでの教育歴 | 小学生時代の大半をアメリカで過ごし、中学以降は日本の学校に通った |
トロント大学の受験体験談: 大学選び編
まず、カナダの大学を進学先として考え始めたきっかけは何でしたか?アメリカやイギリスなど他の国の大学とも比較検討されましたか?

カナダの大学は出願開始時期が早く、年内に合格通知をもらえることが多いので、精神的な安定材料として最適だと考えました。また、アメリカの情勢不安やビザの問題なども考慮し、カナダを選択肢に入れました。
数あるカナダの大学の中から、トロント大学、特にその中でもStudies in Life Sciencesのプログラムに惹かれた理由を教えてください。

もともと高校時代の活動を通して生物や環境分野に興味があったため、Life Sciencesを選びました。トロント大学を選んだ理由は、留学生向けの奨学金の額が大きかったことと、1年次は基礎教養を学び、2年次から専門課程が決まるシステムに魅力を感じたからです。高校時点で将来のビジョンが完全に固まっていなくても、大学入学後に進路変更できる自由度の高さが良いと思いました。
トロント大学特有の、入学後に専攻を柔軟に決められるシステム(POSt)は、多様な興味を持つIB生にとって大きなメリットです。「理系で出願したけれど、やっぱり文系の要素も取り入れたい」といった進路変更も可能な環境は魅力的ですね。
併願校はどのような基準で選びましたか?最終的にトロント大学を進学先に決めた、一番の決め手は何だったのでしょうか。

併願校は、日本の財団奨学金の指定校となっているアメリカのトップ校(アイビーリーグやスタンフォードなど)を中心に約20校出願しました。当初はアメリカが第一志望でしたが、最終的に満足のいく額の奨学金が得られなかったため、選択肢から外しました。トロント大学に決めたのは、前述の進路選択の自由さと、多文化都市であるトロントの住みやすさが決め手となりました。
合格をもらうことと、実際にそこへ通い続けることは別問題です。海外進学は多額の費用がかかる分、奨学金の有無を最終的な決定打にするのは、非常に冷静で賢明な判断です。学費の不安を解消した上で、納得のいく環境を選ぶ。こうした「無理のない資金計画」こそが、学業に集中するための大前提になりますね。
大学やプログラムに関する情報収集は、主にどのように行いましたか?

基本的には各大学の公式サイトや、Common App、UCASといった出願プラットフォームを通じて自分で行いました。説明会にもいくつか参加しましたが、それが行きたい大学を決める決定打になったわけではありません。ただ、出願プロセスの全体的な流れやイメージを掴む上では役立ちました。基本的にはインターネット検索で個人レベルでも十分に情報は集められると思います。
トロント大学の受験体験談: 受験対策・受験編
出願書類について
トロント大学(Faculty of Arts & Science)への出願には、一般的に以下の書類が必要です。年度によって変更される可能性があるため、必ず大学の公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。
OUAC (Ontario Universities’ Application Centre) アカウント:オンタリオ州の大学へ出願するための共通プラットフォーム
高校の成績証明書:IBのPredicted Gradesを含む
英語能力証明スコア:TOEFL iBTやIELTS Academicなど
Self-Reported Grades Form:自己申告の成績入力フォームが必要な場合があるので注意してください
追加エッセイ等:Life Sciences学部自体の出願には通常不要ですが、カレッジや奨学金への応募には必要な場合があります
出願全体の準備はいつ頃から、どのようなスケジュールで進めましたか?出願時に工夫した点があれば教えてください。

トロント大学の「レスター・B・ピアソン奨学金」の学校推薦締切が10月末〜11月初旬だったため、それに合わせて9月頃から準備を始めました。注意点として、OUACはオンタリオ州全体の共通プラットフォームですが、トロント大学単独や特定の奨学金については大学独自のポータルサイトでの作業が必要な場合がありました。OUACに登録してからその仕様に気づくこともあるので、大学ごとの細かい出願ルートは早めに確認すべきです。
トロント大学の出願において、成績以外に自己PRを求められる部分はありましたか?

Life Sciences自体の出願には追加のエッセイは不要でしたが、奨学金の申請時に自己PRとして課外活動をアピールしました。具体的には、小笠原諸島の父島で行った海洋生物保全活動のボランティア経験について記述しました。単に参加した事実だけでなく、そこでの学びや、将来その経験をどう活かしたいかという視点を中心に書くことで、熱意を伝えました。
IBのPredicted Gradeは、出願においてどの程度重要だったと感じますか?

トロント大学の出願ではPredicted Gradeが使用されるため重要ですが、周囲を見ていると、IBのスコア以上に「高校の評定平均」の方が重視されている印象を受けました。IBはあくまで「アドバンストな資格」という位置付けで、基本となる高校の成績がしっかり取れていることが大前提だと感じます。HLで7を取る必要は必ずしもなく、例えば数学で5でも、全体としてバランスが取れていればマイナスにはならないと思います。
一点突破の勝負に出るのではなく、着実に全体の底上げを意識することが重要です。1科目のハイスコアに固執して他を落とすリスクを避ける賢明さが、最終的な結果を左右します。「どこから見ても隙がない」という手堅さは、学力だけでなく、高い自己管理能力の証明にも繋がります。
IBの最終試験に向けた勉強と、大学出願の準備をどのように両立させましたか?

私は11月試験だったので、まずは最終試験に全力を注ぎ、試験が終わった12月・1月にアメリカなどの出願準備を一気に進めることで、時期を明確に分けました。試験で良いスコア(45点)が取れたことが、「難関大学に挑戦しよう」というモチベーションに繋がりました。Final GradeがPredictedより高ければ評価も上がるので、それを目標に試験勉強に取り組みました。
トロント大学の受験体験談: 大学生活編
入学前に抱いていたイメージと、実際に入学してみて感じるギャップはありますか?

IBで学んだ内容(特に理系科目)と大学の講義内容が重複している部分が多く、良い意味で復習のように感じています。一方で、ギャップとしては「講師との距離」があります。高校では少人数で先生と密に話せましたが、大学では数百人の学生に対し教授が1人という環境なので、自分から主体的に動かないとコミュニケーションが取りづらい点は大きく異なります。
IBでの学びが、大学の授業やプロジェクトで活きていると感じる具体的な瞬間があれば教えてください。

特にレポート課題やエッセイ作成において、IBのIAやEEで培ったスキルが非常に役立っています。アカデミックな文章構成や、膨大な課題に対するタイムマネジメント能力は、大学の課題をこなす上での大きな武器になっています。
トロントでの暮らしはいかがですか?生活面でのリアルな情報を教えてください。

寮生活は日本の学校と大きく変わりませんが、中国や韓国など、アジア圏からの留学生が非常に多いことに驚きました。気候は9月時点では温暖で過ごしやすいです。治安も良好ですが、円安の影響で物価は高く感じます。ただ、現地のアルバイトの時給も高いので、そこでバランスを取ることは可能だと思います。
アジア圏の学生が多い環境は、食文化やコミュニティの面で日本人が馴染みやすい大きなポイントです。また、物価高対策のバイトも、単なる学費の足し以上の意味があります。カナダでは学生時代の仕事も「現地での職歴」として評価されるため、社会に溶け込みながら将来の就職に役立つ人脈や推薦を得るきっかけにもなります。
勉強以外では、どのような課外活動や学生コミュニティに参加していますか?

トロント大学の受験体験談: 後輩へのアドバイス
大学受験全体を振り返って、大変だったことも含めて「IBで学んでいて良かった」と感じることは何ですか?

IBのハイレベルな学習を通して、「自分が本当に好きなもの」を見つけやすかった点です。課題の締め切りが重なる時期は時間管理に苦労しましたが、その中で優先順位をつけ、妥協すべき点とこだわり抜く点を見極める力がつきました。プレッシャーの中で自分の学習と正面から向き合った経験は、今の自信に繋がっています。
これからトロント大学のLife Sciencesを目指すIB生の後輩へ向けてアドバイスをお願いします。

「自分だけの視点」を持つことを大切にしてください。例えばボランティア活動でも、ただ参加するだけでなく、そこから自分は何を感じ、どう考えたのかという独自の切り口を見つけることが、エッセイや大学での学びに活きてきます。
トロント大学は、学部の組み合わせが柔軟で、自分の興味に合わせて学びをデザインできる「自由」な大学です。ぜひ自分の興味を突き詰めて、挑戦してください。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回、トロント大学 Life Sciences に在籍するKさんに、北米名門大学のリアルな受験・生活体験談を伺いました。
IB最終スコア45点という素晴らしい実績の裏側には、緻密な戦略と、日々の学びを大切にする真摯な姿勢があったことが伝わってきました。トロント大学の柔軟な履修システムや、IBで培ったスキルが大学生活でどう活きるのかというお話は、これから進路を考える皆さんにとって非常に具体的なイメージに繋がったのではないでしょうか。
IBの道は決して平坦ではありませんが、Kさんのように「自分だけの視点」を持ち、一歩ずつ進んでいくことで、世界中の多様な選択肢が広がっていきます。この記事が、日々奮闘するIB生の皆さんの支えやヒントになれば幸いです。












