【IB受験体験談】キングスカレッジロンドンとトロント大学に受験したNさんにインタビュー

実際の受験はどれほど大変なのか、大学選びや出願プロセス、入学後の生活については、気になっていても当事者のリアルな声を聞ける機会は多くありません。この記事では、イギリス・カナダ・日本の3カ国に出願経験を持つNさんに、特にイギリスとカナダの受験体験を中心にお話を伺いました。それぞれの国における出願制度の違いや苦労した点、そして進学先であるKing’s College Londonでの学生生活まで、海外進学を考えるIB生にとって知りたい情報を詳しく紹介します。

King’s College London の基本情報

King’s College London は、1829年に設立されたイギリス・ロンドン中心部にある名門大学で、医学、心理学、法律、国際関係、人文学などの分野に特に強く、世界中から学生が集まる国際的な大学です。

出願要件:IBスコア

政治学部(BA Politics)の標準的なオファーは、通常合計35点(HL科目で5,5,5を含む)です。ただし、募集要項を確認し、志望学部に応じた最新情報を参照することが重要です。

出願要件:必修のIB科目

政治学部の場合、特定の必須科目は通常ありませんが、エッセイや論述スキルを問われるため、HistoryやEconomics、Englishなど、関連するHL科目は有利に働く可能性があります。

出願要件:英語外部検定試験

  • IELTS Academic:合計7.0以上、各技能6.5以上が一般的です。
  • TOEFL iBT:合計100点以上、Writing 25点、その他23点以上が一般的です。
  • IB English Language and Literature (A)でHLで5または6を満たすことで免除される場合もあります。

UCAS申請のプロセス

UCASとはイギリスの大学出願を統括する中央出願機関です。ほぼ全ての学部課程への出願はUCASを通じて行われます。

提出書類:UCAS出願の主要な提出書類は以下の通りです。

  1. Personal Statement: 自身の学術的な関心、志望動機、関連する課外活動などを4,000文字または47行以内で記述します。
  2. Academic Reference(推薦状): 高校の先生などに学業成績、学習態度、大学で学ぶ能力について記述してもらいます。
  3. Academic Transcript: IBのPredicted Grades(予想スコア)を含めた成績証明書です。
  4. English Language Qualification: IELTSやTOEFLなどの英語外部検定試験のスコア証明書が必要です。

出願期間は通常9月上旬から1月下旬ですが、オックスフォード・ケンブリッジ大学や医学・歯学・獣医学科は10月中旬が締め切りです。

King’s College London

所在地:
イギリスの大学

インタビュイーのプロフィール

所属大学・学部 King’s College London(キングス・カレッジ・ロンドン)、政治学部
受験大学(併願校) 早稲田大学国際教養学部、ICU、上智国際教養学部、University of Toronto St George Campus (Trinity college)、UBC (Vancouver campus) social sciences、Warwick PPL、Queen Marry Law and Politics
出身高校の区分 シンガポールのインターナショナルスクール
IB選択科目・最終スコア [HL] Japanese A Literature, English A Language and Literature, Global Politics
[SL] Biology, Math AA, Film
[Score] 30点代後半
これまでの教育歴 マレーシア・インドネシアでの幼少期 → 日本帰国(広尾学園中学) → 高校からシンガポールのインターへ転校 (IGCSE, IBDP)

大学選び編

併願校も含めてどのように出願する大学を選びましたか?

もともと高校生のうちから海外志向が強く、国際関係学や政治学に関心があったため、イギリスやカナダの大学を中心に検討しました。日本の大学は、早稲田SILS、ICU、上智国際教養など、リベラルアーツ系で国際的な環境があるところを選びました。

筆者
Nさんのように、イギリス(UCAS)、カナダ、日本の大学を同時並行で受験するのは、IB生特有の戦略ですね。これは、IBの成績が各国で評価され、かつ出願時期が異なるため可能な戦略です。しかし、各国で要求される出願書類や対策(特にエッセイや面接)が大きく異なるため、早い段階で各国の入試システムを理解し、準備を始めることが成功の鍵となりそうです。特に、イギリスのPersonal Statementは、他の国のエッセイと用途が違うため、この違いを理解することが重要です。

世界中に多くの選択肢がある中で、なぜ最終的にKing’s College London(KCL)を進学先に選んだのですか?KCLならではの魅力について教えてください。

一番の理由は「都会に住みたかったから」です。キャンパスがロンドンの中心地にあり、歴史的な建造物に囲まれた環境に惹かれました。また、イギリスの大学は基本的に3年制なので、早く社会に出られる、あるいは浮いた1年分で修士号(大学院)を目指せるという点も大きな魅力でした。現在はキャンパスライフを楽しみつつ、自由な時間の多さも気に入っています。

筆者
都会志向の学生にとって、ロンドンの中心地で学べるKCLは非常に魅力的です。「3年制」というイギリス特有のシステムを、単なる期間短縮ではなく「大学院進学へのステップ」として戦略的に捉えている点は、キャリア形成を見据えた大学選びの参考になります。

イギリス、カナダ、日本と異なる地域の大学を併願されていますが、それぞれの受験準備や求められることの違いをどう感じましたか?

日本の大学(特に上智大学など)は紙媒体での書類提出が多く、物理的な準備が大変でした。一方、海外大学はオンラインで完結しますが、システムが異なります。カナダやアメリカは「課外活動」や「人物像」を重視したエッセイを求められるのに対し、イギリス(UCAS)は「学業への関心」が中心です。カナダのUBCではリーダーシップ経験などを詳しく書く必要があり、それが奨学金獲得にも繋がりました。

実際に受験を経験して感じた、イギリスの大学とカナダの大学のシステムやカルチャーの大きな違いは何ですか?(入学後の専攻決定プロセスや転学の難易度など)

最大の違いは「専門化のタイミング」です。イギリスは入学直後から専門課程(私の場合は政治学)に入りますが、カナダは4年制で、最初の1〜2年はリベラルアーツ的に広く学び、3年次頃に専攻を決定します。やりたいことが明確ならイギリスが近道ですが、迷っているならカナダの方が合っているかもしれません。また、イギリスは単位認定や転学の条件が厳しく、一度単位を落とすと留年のリスクが高いなど、システム的な厳格さも感じます。

筆者
「やりたいことが決まっているか否か」で国を選ぶというのは非常に重要な視点です。入学後の進路変更が難しいイギリスと、猶予があるカナダ。IB生は幅広い科目を学ぶため興味が分散しがちですが、自分の適性を見極めて国を選ぶ必要があります。

出願前に「もっとこうしておけば良かった」と感じることはありますか?

コース内容や大学ごとの特徴をもっと詳しく調べておくべきでした。受験時は「受けられるだけ受けよう」というスタンスで、あまり行く気のない大学にも出願してしまいましたが、結果的にお金と労力の無駄になってしまいました。特にアメリカやカナダは大学ごとのエッセイ準備が必要な場合もあるので、本当に自分が行きたい環境なのか、コース詳細まで事前にリサーチして絞り込むことをお勧めします。

筆者
大学受験は出願料も安くなく、エッセイ作成の負担も大きいです。「とりあえず出願」は精神的な負担にもつながります。Nさんのように「合格してから決める」スタイルも一つの手ですが、特に併願校が多い場合、優先順位をつけたリサーチが不可欠と言えそうです。

【受験対策・出願編】KCL政治学部合格者が実践したUCASとIB対策

複数の大学を受験する際、何が大変でしたか?

一番大変だったのは、各国・各大学で求められる書類の要件が全く異なっていたことです。日本の大学の面接対策と、イギリスやカナダの大学のエッセイ・パーソナルステートメントの執筆を並行して進める必要がありました。例えば、日本の大学はなぜ本学を選んだかを重視しますが、UCASのPersonal Statementはなぜこの分野を学びたいのかという学術的な動機と適性に焦点を当てる必要があり、テーマ設定から書き方まで根本的に違いました。これをIBの最終試験の勉強期間と並行して進めるのは、本当に時間との勝負でした。

筆者
日本の大学の多くは面接で「対人コミュニケーション力」「熱意」を重視する傾向がありますが、イギリス大学受験の核となるPersonal Statementは、「論理的思考力と学術的関心」を文字で伝える能力が試されます。Nさんの経験から、IB生は「書く」対策と「話す」対策の切り替えを意識し、特にUCASのPersonal Statementは、学術的な深掘りを徹底して行うことが求められると分かります。

日本の大学受験と海外大学の受験にどんな違いを感じましたか?

日本の大学受験は、面接や小論文といった対人・対話の要素がまだ多く残っていると感じました。一方、KCLを含むイギリスの大学受験は、ほぼ全てが書類審査で完結します。特に、IBのPredicted GradesPersonal Statementの二つで合否が決まると言っても過言ではありません。これは、IBの成績が非常に重視されること、そしてIB生がもともと持っているアカデミックな文書作成能力が重要視されることを意味します。エッセイやレポートで思考を表現する力が、日本の受験よりもずっと重要だと感じました。

出願書類はいつ頃から準備しましたか?

IBの最終試験が近かったこともあり、出願書類の準備は高校3年生の夏休み前、つまりIBの最終学年の初め頃から本格的に始めました。特にPersonal Statementは夏休みの間に集中して仕上げることを目標にしていました。IBの勉強と並行して行うため、計画的に早く始めることが必須です。

多くの大学を受験する中で、受験対策とIBの勉強をどのように両立させましたか?また、IBの勉強とは別に特別何か受験対策はされていましたか?

特別な塾通いや対策はほとんど行いませんでした。私はもともとエッセイを書くのが好きで、IBの課題で多くのライティングをこなしていたことが、そのまま大学のエッセイ対策になりました。受験勉強とIBの勉強を切り離して考えるのではなく、IBの学習(特に言語科目や社会系科目)を通して培った論理構成力や表現力が、志望動機書作成の基礎体力になったと感じています。

筆者
「IBの勉強がそのまま受験対策になる」という言葉は、現役IB生にとって非常に勇気づけられる事実です。特に海外大学受験では、IBで鍛えられるクリティカルシンキングやアカデミックライティングのスキルが、そのまま合否を分けるエッセイの質に直結します。

IBの成績以外で受験に役立った課外活動などはありましたか?

はい、受験に役立ったのは、高校で参加していた模擬国連(Model UN)の活動です。模擬国連で特定の国際問題をリサーチし、他者と議論した経験は、政治学への強い関心を示す最高の材料になりました。Personal Statementでは、この活動を通じて「なぜこの問題解決のために政治学を学びたいのか」という学術的な動機付けに結びつけて強調しました。IBのCAS活動を、単なる活動記録としてではなく、志望学問分野への熱意を示す論拠として活用することが重要だと思います。

出願に必要な英語外部検定試験は、どの試験(TOEFL、IELTS等)を選択し、目標スコアをいくつに設定しましたか?IBの英語学習に加えて、英語外部検定試験の対策を行っていればどのような対策を行っていたか教えてください。

私はIELTSを選択しました。KCLの要求スコアはOverall 7.0、各セクション6.5以上が目安でしたが、それを上回るスコアを目指しました。IBのEnglish B HLで学んでいましたが、IELTSは試験形式が特殊なため、過去問集や専門の対策本を使って集中的に勉強しました。特にWritingはアカデミックなトピックに対応するための語彙力と論理構成力を意識し、時間を計って練習することが有効でした。

出願時のプレディクテッドスコアと、実際に大学から提示された条件(Conditional Offer)の内容について教えてください。

KCLからの条件は、「HL科目で6, 6, 7(合計19点)以上」かつ「合計35点以上」といった内容でした。カナダの大学(UBCやトロント)はもう少し条件が緩やかで、「主要科目で大幅に点数を落とさないこと(例:2点以上下げない)」といった維持条件でした。イギリスの方が最終試験の結果に対するプレッシャーは大きかったです。

不安やストレスをどういう風に管理しましたか?

IB最終試験と複数の国の大学出願が重なる時期は、非常にストレスフルでした。出願中は「全落ちしたらどうしよう」という不安が常にありました。それを解消するために、学校のユニバーシティ・カウンセラー(進路指導の先生)に頻繁に相談に行きました。「君のスコアなら過去のデータから見て、この大学は高い確率で受かるよ」といった客観的なアドバイスをもらうことで、精神的な安定を保っていました。

また、不安を管理するために「計画を立てて、それを実行すること」に集中しました。やるべきことを細かくタスクに分け、一つずつクリアしていくことで、全体の見通しを良くしました。また、友人と定期的にリフレッシュの時間を取り、受験から完全に意識を離す時間を作ることも意識的に行っていました。

筆者
Conditional Offerの厳しさはイギリス大学特有のハードルです。HL科目での具体的なスコア指定(6,6,7など)は、苦手科目をHLにしていると非常に高い壁になります。科目選択の段階から、高得点が狙える「得意科目」をHLに配置する戦略が重要であることがわかります。

UCASを使ったイギリスの受験体験談

UCASフォームの作成やパーソナルステートメントの内容で苦労したこととか強調したポイントを教えていただいていいですか?

UCASのPersonal Statementは1通を最大5つの出願先に使い回すため、内容の調整に苦労しました。私は「政治学」だけでなく「哲学・政治・経済(PPE)」のような学部も併願していたため、どのコースにも通じるよう、特定の分野に絞りすぎず、かつ「なぜ社会構造や政治に興味があるのか」という根本的な知的好奇心や熱意を強調して書き上げました。ドラフトは先生やカウンセラーに何度も見てもらいました。

筆者
UCASのPersonal Statementは、たった4,000文字(または47行)で5つの大学全てに共通して提出されます。そのため、Nさんが苦労されたように、文字数制限の中で「なぜその分野を学びたいのか」という学術的な動機を論理的に、かつ情熱的に伝えることが鍵となります。「この学生にはうちの大学で学ぶに値する知的好奇心がある」と大学側に思わせる内容が不可欠です。IB生は、EEやTOKで書いたテーマをPersonal Statementの核として活用すると、深みのある文章が書ける可能性が高いです。

エッセイで出題されたテーマと執筆した内容について教えてください。

KCLの政治学部は、出願時に追加のエッセイ提出は求められませんでした。UCASのPersonal Statementが、実質的な志望理由のエッセイとして機能します。しかし、他の併願校であるWarwick PPLなどは、追加の提出物(例:ライティングサンプル)が求められる場合があったため、Personal Statementとは別に、特定のトピックに関する文章作成の準備は常にしておく必要がありました。

カナダの大学受験体験談: トロント大学

OUAC(Ontario Universities’ Application Centre)を通じて出願を行うトロント大学では、IBスコアや成績証明書に加え、「Applicant Profile」と呼ばれる補足書類の提出が求められます。これは、学業成績だけでは測れない、個人の特性や課外活動、志望動機などをアピールするための重要なツールです。特にSt. George CampusのTrinity Collegeのようなカレッジに出願する場合、この書類の重要度は高くなります。

University of Toronto

所在地:
カナダの大学

 

Applicant Profileという補足書類を提出する際、どんな質問があったか、どのような点をアピールしたのか、準備にどれくらい時間を使ったかなど教えてください。ライティングサンプルやエッセイなどの提出があった場合、どのようなテーマで何を書いたか、差し支えのない範囲で教えてください。

Applicant Profileは、主にショートアンサー形式の質問で構成されていました。具体的な質問は覚えていませんが、「あなたがコミュニティに与えた影響は?」「学業以外で最も情熱を注いだことは?」といった、リーダーシップや貢献度を問う内容が多かったです。私は、高校の模擬国連活動や、特定のボランティア活動を通して得た経験を具体的なエピソードと共に記述し、多様な視点を持つことの重要性をアピールしました。準備には、UCASのPersonal Statementと並行して、約1ヶ月かけてエピソードを整理しました。

カナダ(UBC・トロント大学)の出願では、どのような点を重視されたと感じますか?課外活動のアピールについても教えてください。

カナダの大学は成績だけでなく「人となり」を重視していると感じました。例えばUBCでは、CAS(創造性・活動・奉仕)で行った活動やリーダーシップ経験について具体的に記述する機会がありました。私は学校のクラブ活動やポッドキャスト制作などの経験をアピールし、それが評価されて奨学金(Merit-based scholarship)を頂くことができました。

筆者
イギリスは「学問への熱意(Academic Interest)」、カナダ・北米は「課外活動を含めた全体像(Holistic Review)」という評価軸の違いが明確に表れています。IBのCAS活動を単なる要件消化にせず、自分の強みとして語れるエピソードにしておくことが、北米圏の大学受験では強力な武器になります。

カナダの大学受験体験談:UBC

EducationPlannerBCというシステムを通じて出願を行うUBC (University of British Columbia) も、IB生を積極的に受け入れています。UBCのアプリケーションプロセスでは、IBのPredicted Gradesに加え、「Personal Profile」と呼ばれる質問群への回答が求められます。これは、カナダの大学が学業成績だけでなく、学生の総合的な人格や経験を重視していることの表れです。

University of British Columbia

所在地:
カナダの大学

どのような質問をされましたか?

UBCのPersonal Profileでも、トロント大学と同様にショートアンサー形式の質問がいくつかありました。例として、「困難な状況に直面したとき、どのように乗り越えましたか?」「チームで働く上で、あなたの役割は何でしたか?」といった、問題解決能力や協調性を測る質問が出ました。私は、IBのグループワークやCAS活動での失敗や成功体験を具体的に描写し、そこから何を学んだかという点に重きを置いて回答しました。

IBを使っての入試だったと思いますが、科目要件や取っていたら有利な科目はありますか?

UBCのSocial Sciences(社会科学)学部に出願しましたが、特定のHL科目の必須要件はなかったと記憶しています。しかし、IBのカリキュラム上、HLでHistoryやEconomicsといった社会科学系の科目を取っていることは、学問への適性と熱意を示す上では有利に働いたと思います。また、IBのHigher Levelの科目は、カナダの大学の初年度の授業と内容が重なることがあり、入学後もスムーズに移行できるというメリットがあります。

出願書類で特に重視されたと思う項目はなんだと思いますか?

UBCやトロント大学のようなカナダのトップ大学では、IBのPredicted Gradesはもちろん重要ですが、それ以上にPersonal Profile(Applicant Profile)の内容が合否に大きく影響したと思います。学業成績が多少低くても、個人の経験や価値観、問題解決能力をしっかりとアピールできれば、逆転のチャンスがあると感じました。カナダの大学は、「キャンパスコミュニティに貢献できる学生」を求めている印象が強いです。

Kings’ College London の学生生活

大学選びの時にえていた情報や描いていた感覚と、実際に入学をしてみて感じることにギャップがあれば教えてください。

入学前に抱いていたイメージと大きく異なったのは、授業のスピードと量の多さです。イギリスの3年制は、IBで学んだ内容を土台として、非常に専門的で深い議論に入ります。予習・復習の量が想像以上に多く、IBで身につけた時間管理能力がなければついていけなかっただろうと感じています。ですが、授業が面白く、自分の好きな政治分野だけに集中できるところが気に入っています。 一方で悪い点は、ロンドンの物価の高さや治安です。盗難や不審者といったトラブルが身近にあり、常に注意が必要です。カフェ代も高いため、自炊は欠かせません。華やかなイメージだけではなく、自分の身は自分で守るというサバイバル能力が求められる環境だと、日々実感しています。

大学受験中、または入学後、IBをやっていて良かったと感じたことはありますか?

大学受験中も入学後も、IBをやっていて良かったと感じることは多々あります。受験では、IBスコアのおかげで世界中の大学に挑戦する機会を得られました。入学後は特に、Extended Essay(EE)で身につけたリサーチプロセスアカデミックライティングのスキルが、大学のレポート作成や論文執筆で即戦力となっています。また、TOKで培った多角的な視点や批判的思考は、政治学の議論に参加する上で必須の能力でした。

筆者
Nさんの話から、IBDPで培う「クリティカルシンキング(批判的思考)」「リサーチ能力」は、大学入学後、特にイギリスの政治学のような学部で即戦力となっていることが伺えます。IB生は、入学前から既にアカデミックな訓練を積んでいるという点で、大きなアドバンテージを持っていると言えるでしょう。EEは単なる卒業要件ではなく、大学で求められるスキルの予行演習として捉えるべきです。

授業外でのインターンやサークル活動に参加する機会は多いですか?

非常に多くあります。KCLはロンドン中心部に位置しているため、授業外で参加できる機会が豊富です。特に政治学部は、政府機関やシンクタンク、国際NGOなどがキャンパス周辺に集中しており、インターンシップやゲストスピーカーを招いた大学主催のイベントに気軽に参加できます。積極的に情報を収集すれば、学生であってもロンドンのプロフェッショナルな環境に身を置くチャンスは数多くあります。

また、サークル活動は友人関係を築き、自分のコミュニティを広げるうえで大きな役割を果たしています。KCLはクラス単位での活動が少なく、非常に個人主義的な環境です。そのため、受け身の姿勢では友人はできません。私はJapan Society、Political Society、ハイキング部、学生新聞など複数のサークルに所属し、意識的に交流の場を作ってきました。自ら行動しなければ孤立してしまう環境だからこそ、サークル活動は授業以上に学生生活の基盤を形づくる重要な要素だと感じています。

筆者
海外大学、特に都市型の大学では、キャンパスという囲われた空間が存在しないことも多く、人間関係が希薄になりがちです。そのため、「勉強だけ」に偏らず、課外活動を通じて自分の居場所を見つけようとする積極性が、充実した留学生活を送るうえでの隠れた必須スキルだと言えるでしょう。

キャンパスがロンドンの中心にあるメリット、デメリットはなんですか?

メリットは、何と言っても情報と機会の多さです。学術的なイベントだけでなく、美術館、劇場、様々な国のコミュニティにすぐにアクセスでき、文化的な刺激が多いです。また、卒業後の就職活動においても、企業のアクセスが良いのは大きな強みです。デメリットは、やはり生活費の高さです。家賃や交通費は非常に高額で、学生にとっては大きな負担になります。そのため、生活費の工面や、キャンパスライフとアルバイト・活動のバランスをうまく取る自己管理能力が求められます。

KCLのネットワークやコミュニティなどはキャリア形成に役立ちそうですか?

KCLは世界中に強力なアルムナイ(卒業生)ネットワークを持っています。政治学部ということもあり、特に国際機関や政府、金融、コンサルティングといった分野で活躍している卒業生が多いと聞きます。大学のキャリアセンターも非常に充実しており、業界別のイベントやアルムナイとのネットワーキングセッションが頻繁に開催されています。これらのネットワークを活用することで、ロンドンの競争的な就職市場でも有利にキャリアを形成できると感じています。

これからKing’s College London を目指すIB生に向けて、「これだけはやっておいた方がいい」というアドバイスをお願いします。

一番やってよかったのは「好きな科目を徹底的に選んだこと」です。好きだからこそ大変なIBも乗り越えられました。また、当時は文系だから不要だと思っていた数学(Math AA)が、今、政治学のデータ分析で非常に役立っています。その時は意味がないと思えても、IBで学ぶ内容は将来必ずどこかで繋がります。「好き」を軸にしつつ、食わず嫌いせずに学ぶ姿勢が大切だと思います。

また、「IBを本気でやり抜くこと」「Personal Statementの核を早く見つけること」を早くから意識することが大事だと思います。KCLのオファーを勝ち取るには、IBのPredicted Gradesで高いスコアを取ることが最低条件です。だから、日々のIBの勉強を疎かにしないでください。そして、Personal Statementは、「なぜその学問を学びたいのか」という問いに対して、誰もが納得するような学術的な動機と、それを裏付ける具体的な活動(CASやEE)を示す必要があります。この核となる部分を高校2年生のうちから見つけておけば、受験期に慌てることなく、説得力のある書類が作成できます。「IBの学習=KCL受験対策」だと信じて、頑張ってください。

筆者
IBは世界中の大学で高く評価される非常に有利な資格です。高校時代は課題に追われて苦しく感じることもありますが、その経験は確実に大学進学後に生きてきます。実際、多くのIB卒業生が「当時の苦労は大学生活の先取りだった」と振り返るように、アカデミックな厳しさで知られるKCLのような大学でも、IBで培った力があれば課題を以前より楽に感じられる場面が訪れます。後悔しないためにも志望校の情報収集は早めに進めつつ、まずは目の前のIBの学びに自信を持って全力で取り組んでください。