【IB受験体験談】トロント大学 Mechanical Engineeringに合格したYさんにインタビュー!

今回は、カナダの名門・トロント大学理工学部(Mechanical Engineering)に合格し、現在現地で学ぶYさんへのインタビューをもとに、その魅力とリアルな受験体験談をお届けします。
「世界ランキング上位のトロント大学に、IB生はどうやって挑めばいい?」
「独特な『ビデオ面接』や『筆記試験』は、どのくらい難しいの?」
そのような不安を持つIB生の皆さんにとって、北米トップ大学への出願は、非常に高いハードルに見えるかもしれません。
この記事では、Yさんの体験談を通して、戦略的な大学選びの軸から、想定外の質問が飛んでくるオンライン選考の対策、そして入学後のリアルな生活事情まで、他では聞けない「生の情報」をお伝えします。
- 1. トロント大学について
- 2. インタビュイーのプロフィール
- 3. トロント大学の受験体験談: 大学選び編
- 4. トロント大学の受験体験談: 受験対策・受験編
- 4.1. 出願書類について
- 4.2. 出願全体の準備はいつ頃から、どのようなスケジュールで進めましたか?出願時に工夫した点があれば教えてください。
- 4.3. 選考の核となる「Personal Profile」についてお伺いします。まず、筆記に向けて、どのような事前準備や練習を行いましたか?
- 4.4. 筆記でどのようなテーマが出題されましたか?また、工夫した点があれば教えてください。
- 4.5. 次に「Video Response」に向けては、どのような対策をしましたか?
- 4.6. 「Video Response」では、どのような質問がありましたか?また、短い準備時間で回答を組み立てる際、どのように頭の中を整理しましたか?
- 4.7. IBのPredicted Gradeは合否に大きく影響しますが、希望の予測スコアを得るために、日々の学習や先生とのコミュニケーションで何か工夫したことはありましたか?
- 5. トロント大学の受験体験談: 大学生活編
- 6. トロント大学の受験体験談: 後輩へのアドバイス
- 7. 最後に
トロント大学について
大学・学部の特色
トロント大学は1827年に創立されたカナダ屈指の研究大学であり、世界大学ランキング(QS World University Rankings 2025)では世界29位、カナダ国内では1位にランクインしています。
中でも理工学部(Faculty of Applied Science & Engineering)は、北米でも屈指の歴史と権威ある学部の一つです。特筆すべきは、カナダ最大の有給インターンシッププログラム「PEY Co-op」です。学生は学位取得過程の中で、最大12〜16ヶ月間、企業でフルタイムのエンジニアとして働くことができ、卒業後の就職に直結する実践的な経験を積むことができます。
Mechanical Engineering について
Mechanical Engineering(機械工学)は、最も多様な分野に応用が利く工学分野の一つです。トロント大学では、エネルギー、メカトロニクス、製造、バイオメカニクスなど幅広い専門領域を学ぶことができます。IB生の場合、HLでの数学と物理、化学(または他の理科科目)の履修が強く推奨されており、非常に高いアカデミック水準が求められます。
インタビュイーのプロフィール
今回インタビューに協力してくれたのは、現在、トロント大学Mechanical Engineeringに通うYさんです。
| 所属大学・学部 | トロント大学 Mechanical Engineering |
|---|---|
| 併願校 | ブリティッシュコロンビア大学、ブリストル大学、マンチェスター大学 |
| 出身高校の区分 | 海外インター |
| IBスコア | 40点 |
| IB選択科目 | SL:Japanese A, English B HL:Math AA, Physics, Business Management |
| これまでの教育歴 | 小4〜高3:シンガポールへ移住 |
トロント大学の受験体験談: 大学選び編
併願校も含め、どのように受験校を選びましたか?

元々、「絶対に行きたい大学」があったわけではありませんでした。ただ、シンガポールに約10年間住んでいて少し飽きてしまったこともあり、「別の国で学んでみたい」という思いが強かったです。以前サマースクールに参加して印象が良かったイギリスと、友人が住んでいて寒い気候も好きだったカナダを中心に考えました。
── 日本の大学は視野に入れていなかったのですか?

日本については、IB取得後でも帰国生入試等で小論文などの追加試験が必要なケースが多いですよね。個人的に「IBをこれだけ頑張ったのになぜ?」という思いや、万が一落ちた時のリスクを考えて選択肢から外しました。最終的には、QSランキングのトップ100に入る大学にすべて出願するつもりで選びました。
受験国を選ぶ際に「その国での生活を変えてみたい」という視点を持つのは、長期間海外で過ごすIB生ならではの感覚かもしれませんね。また、日本の帰国生入試の負担感については、多くのIB生が共感するポイントだと思います。
最終的にトロント大学のMechanical Engineeringへの進学を決めた最大の理由は何だったのでしょうか。

最大の理由は「仕事経験(PEY Co-op)」です。イギリスの大学は「卒業したら終わり」という印象が強かったのに対し、トロント大学は在学中に1年間の仕事経験が積めるプログラムがある点に強く惹かれました。
── やはり就職を見据えて、ということですね

そうですね。最近は良い大学を出ても実務経験がないと就職が難しいと聞いていたので、そこを重視しました。また、同じカナダのUBC(ブリティッシュコロンビア大学)とも迷いましたが、UBCは1年目が「共通の工学コース」で、2年目から成績順に専攻を決めるシステムでした。せっかく頑張って機械工学を目指したのに、また競争しなければならないのが不安だったので、最初からMechanical Engineeringとして入学できるトロント大学を選びました。
ご自身のどのような興味やIBでの学びが、Mechanical Engineeringという専攻を選ぶきっかけになりましたか?

最初はエンジニアになりたいとは全く思っていませんでした。ただ、HLで数学と物理を選択していたので理系には進むだろうと思っていました。TikTokなどで機械工学に関する動画を見て、幼少期にレゴブロックが好きだったことや、AI義手などの技術に関心があったことを思い出し、「機械工学なら最も応用範囲が広く、自分の興味を形にできる」と感じました。物理学そのものの研究よりも、物理をどう現実に活用するかというエンジニアリングの側面に惹かれたのが、この専攻を選んだ理由です。
トロント大学の受験体験談: 受験対策・受験編
出願書類について
トロント大学工学部の出願には、OUAC(オンタリオ州大学出願センター)を通じた基本情報の登録に加え、大学独自の「Online Student Profile」の提出が必要です。これには課外活動の履歴、成績、そしてオンラインでの筆記・ビデオ選考が含まれます。
出願全体の準備はいつ頃から、どのようなスケジュールで進めましたか?出願時に工夫した点があれば教えてください。

カナダへの出願を決めたのが遅く、11年生の初め頃から準備を始めました。「Early Application(早期出願)」の方が合格の可能性が高くなると聞き、10月頃にはOUACでの出願を済ませ、12月には理工学部のポータル(活動履歴の提出やエッセイ等)も含めて全ての書類を出し切りました。
── 課外活動はどういったことを書きましたか?

私は水泳部に所属していて、シンガポールという国の特性上、国内大会への出場経験などを書きやすかったので、「文武両道」でバランスの取れた学生であることを強調するように工夫しました。
選考の核となる「Personal Profile」についてお伺いします。まず、筆記に向けて、どのような事前準備や練習を行いましたか?

実はインタビューがあること自体をあまり知らず、メールで案内が来てから練習ポータルで1回だけ練習しました。本番の形式は、画面に質問が出て、思考時間があり、その後に回答を入力するというものです。
── それは大変でしたね。本番は練習ポータルと同じような感じでしたか?

練習の時は文字数がもっと少なかったのですが、本番では急に「350文字以上書いてください」と指定されて非常に焦りました。5分程度で350文字を書かなければならず、練習よりもハードルが上がっていたので驚きました。
練習よりも本番のハードルが高かったというのは、まさに実体験ならではの貴重な情報です。「文字数が増える可能性がある」と想定して、少し多めに書く練習をしておくと安心かもしれませんね。
筆記でどのようなテーマが出題されましたか?また、工夫した点があれば教えてください。

筆記試験では「大学に入ったらどのようなクラブに入りたいですか?」という質問が出ました。また、「あなたはこの大学で何を学びたいですか?」といった内容もあった記憶があります。
── アカデミックな内容ではなく、課外活動系だったんですね。時間配分はどのように行いましたか?

質問が表示されてから回答するまでに数分間のThinking Timeがあります。その間に手元のノートに構成(言いたいことの箇条書き)を急いで書き出し、執筆時間になったらそれをひたすら打ち込みました。書いている途中で「あ、このアイデアもいいな」と思いついたことを追加しながら、制限時間ギリギリまで書いていました。
数理的な難問ではなくあえて「課外活動」を問う点に、学力以外の人間性も含めて多角的に評価する「Holistic Review」の意図が如実に表れています。また、制限時間内に構成から執筆まで完遂させる手腕は、まさにIBで鍛えられた構成力とタイムマネジメントの為せる技ですね。
次に「Video Response」に向けては、どのような対策をしましたか?

こちらも基本的には練習用ポータルで感覚を掴んだ程度で、特別な対策講座などは受けませんでした。ただ、質問内容は全く予想できませんでした。
私は勝手にエンジニアリングに関する専門的な質問が来ると思っていたのですが、実際はもっとビジネス寄りというか、アイデアや発想力を問うような質問でした。学校のAcademic Advisorに相談しても詳細は知らなかったので、ほぼ自力でぶっつけ本番という形でした。ただ、普段からMacBookを使っていて機材には慣れていたので、技術的な不安は排除して臨めました。
「Video Response」では、どのような質問がありましたか?また、短い準備時間で回答を組み立てる際、どのように頭の中を整理しましたか?

ビデオインタビューでは「大学の敷地内にフードトラックのシステムを導入するにはどうすればよいか」という質問が出ました。
── エンジニアリングの試験でフードトラックですか?

そうなんです、驚きました。回答を組み立てる際は、「人間は3つのポイントで話すと聞きやすい」というセオリー(Rule of 3)を意識しました。「導入すべき理由」や「どうシステム化するか」について3つの要点を挙げ、IBで習った「PEEL構造(Point, Explanation, Evidence, Link)」のような形を使って、最初の1行で言いたいことが伝わるように構成を練りました。
「フードトラック」という一見機械工学とは無関係なテーマから、課題解決へのアプローチや発想力を測ろうとする点が非常にユニークです。 想定外の質問にもパニックにならず、IBで習得した「PEEL構造」などのフレームワークを瞬時に引き出し、論理的に回答を構築できる対応力はさすがですね。
IBのPredicted Gradeは合否に大きく影響しますが、希望の予測スコアを得るために、日々の学習や先生とのコミュニケーションで何か工夫したことはありましたか?

私の性格上、先生に迷惑をかけたりトラブルを起こしたりするタイプではないので、授業を真面目に聞き、静かに問題を解くという姿勢が評価されたのだと思います。先生からの印象が良かった分、少し甘めにスコアをつけてもらえた部分もあるかもしれません。
── テストの点数だけでなく、日頃の態度も大事なんですね。

そう思います。学習面では、常に「7」を目指すつもりで取り組んでいましたが、トピックテストでは点数が上下することもありました。それでも普段通りコツコツ勉強することを心がけていました。
トロント大学の受験体験談: 大学生活編
入学前に抱いていたイメージと、実際に入学してみて感じるギャップはありますか?

大学は「閉ざされたキャンパス」だと思っていましたが、トロント大学は街と一体化していて、キャンパス内を観光客が歩いているのが日常茶飯事だったのが驚きでした。
── 学生の雰囲気はどうですか?

意外だったのは「留学生」よりも「カナダ生まれのアジア系」が非常に多いことです。見た目はアジア人でも中身は完全なカナダ人で、英語がネイティブという学生が多くて。日本語や中国語で話しかけられるかと思ったら通じない、ということがよくあって、そこはギャップでしたね。
IBでの学びが、大学の授業やプロジェクトで活きていると感じる具体的な瞬間があれば教えてください。

正直なところ、EEで耐震構造について書いたことや、TOKの哲学的な思考が、今の機械工学の授業に直接役立っている感覚はあまりありません。
ただ、IBを通して身についた「課題を早めに終わらせるタイムマネジメント能力」は非常に役立っています。また、数学はIBの内容の復習から始まっているのでスムーズに入り込めましたし、物理の難易度は高いですが、IB Physicsの基礎があるおかげでなんとかついていけています。
トロントでの暮らしはいかがですか?住居、食事、気候など、生活面でのリアルな情報を教えてください。

気候は、夏でも涼しくて過ごしやすいですが、朝晩の寒暖差が激しいです。まだ秋口ですが、すでに冬服を買い揃えています。食事はアメリカンフードが多く、野菜不足になりがちなので意識して摂るようにしています。
治安については、思っていたよりも少し怖いです。大麻のにおいが街中で漂っていたり、地下鉄で叫んでいる人がいたりします。ルームメイトからも「夜は一人で出歩かないこと」「知らない人には話しかけられても無視すること」と強く言われています。誘拐情報を知らせる「アンバーアラート」が鳴った時は、音が地震速報に似ていて本当に驚きました。
「世界で最も住みやすい都市」ランキングの常連であるトロントですが、ダウンタウンのキャンパスならではのリアルな治安事情は、実際に住んでみないと分からない貴重な情報ですね。 都会ならではの緊張感はあるものの、こうした実情を事前に知っておくことこそが最大の防犯対策になります。華やかな面だけでなく、気を引き締めるべきポイントも理解した上で渡航できれば、留学生活のスタートはよりスムーズなものになりそうです。
勉強以外では、どのような課外活動や学生コミュニティに参加していますか?また、工学部の大きな特徴である「PEY Co-op(有給インターンシップ)」プログラムについて、どのように考えていますか?

今は「UTSM」という、カーボンファイバー製の省エネ車を製作するデザインチームに参加しようとしています。また、トロントの日本人学生会にも応募しました。人気のデザインチームは倍率が高く、選考課題もあるので積極性が求められます。
PEY Co-opは3年次にあるのですが、多くの学生がそれに向けて1・2年次の夏休みに研究室に入ったりして準備をしています。企業側も「トロント大学の学生」を求めているので、プログラムを通じて仕事は見つけやすいのではないかと期待しています。
トロント大学の受験体験談: 後輩へのアドバイス
一連の選考を終えて、トロント大学は受験生のどのような資質を評価していると実感しましたか?

学力だけを見ているわけではない、ということを強く感じました。学力はIBのスコアで証明されているので、エッセイやインタビューでは「その場での発想力」や「アイデアの出し方」を見ているのだと思います。
また、出願プロセスの中で性別(ジェンダー)に関する質問が非常に多く、選択肢が10個くらいあったのが印象的でした。多様性を重んじるカナダの大学らしく、個々のアイデンティティや背景をしっかり把握しようとしている姿勢を感じました。
これからトロント大学Mechanical Engineeringを目指すIB生に向けて、「これだけはやっておいた方がいい」という受験対策や高校生活でのアドバイスをお願いします。

IBの科目選択では、HLで数学と物理を絶対に取っておくことをお勧めします。大学の授業についていくための基礎体力が全く違ってきます。
高校生活では、とにかく「睡眠」を大切にしてください。パフォーマンスを維持するには健康が一番です。受験対策で過度に緊張したり、高額な塾に通ったりする必要はありません。学校の授業を大切にして、自分らしく挑戦してください。それから、入学後は「学費未納」を装った詐欺メールなどが来るので気をつけてくださいね!
── 最後に、Yさんが思うトロント大学の魅力を教えてください。

トロント大学の魅力は、「人の優しさ」です。英語が第一言語でなくても理解しようとしてくれる友人が多く、教授も「質問ウェルカム」な雰囲気で、オフィスアワーなどを通じて親身に接してくれます。とても学びやすい環境ですよ。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回、トロント大学 Mechanical Engineering に在籍するYさんに、北米名門大学のリアルな受験・生活体験談を伺いました。
一見するとハードルの高い海外大学への進学ですが、Yさんの体験談からは、IBで培った「論理的な思考の型」や「自己管理能力」が、世界トップレベルの環境でも通用する強力な武器になることが証明されています。
想定外の質問にも動じず、自分の引き出しから答えを導き出すその姿勢は、まさにIBの学びを通して得られる真の強さと言えるでしょう。この記事が、日々の課題と向き合う皆さんのモチベーションとなり、世界への一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。











