【IB受験体験談】国際教養大学にグローバル・ワークショップ入試で合格したHさんにインタビュー!

今回は、秋田県にある国際教養大学(AIU)に、グローバル・ワークショップ入試で合格したHさんへのインタビューをもとに、その魅力とリアルな受験体験談をお届けします。
「海外の大学みたいな環境で学びたいけど、学費が心配…」
「自分の強みを十分に活かせる入試はあるだろうか」
そんな思いを持つIB生の皆さんにとって、国際教養大学のグローバル・ワークショップ入試は非常に魅力的な選択肢の一つです。この記事では、Hさんの体験談を通して、大学選びの軸から、具体的な受験対策、そして入試当日の様子まで、他では聞けないリアルな情報をお伝えします。
国際教養大学について
大学・学部の特色
国際教養大学(AIU)は、「国際教養教育」を理念に掲げ、グローバル社会のリーダー育成を使命としています。その教育は、世界の広範な事象に関する知識と理解、物事の本質を見抜く思考力、そしてグローバルな視野を養うことを目的としています。
AIUの大きな特色は以下の通りです。
英語の少人数教育:AIUでは全ての授業を英語で開講しており、平均17名の少人数クラスで行われる深い議論を通して学びを深めることができます。
1年間の海外留学の義務化:異文化体験を通じて、国際的な視野とセンスを身につけます。提携大学は52カ国・地域に200校以上あり、世界中に広がるネットワークが魅力です。
多文化共生のキャンパス:留学生が数多く在籍し、授業内だけでなく、寮での共同生活やクラブ活動でも積極的に交流することができます。
グローバル・ワークショップ入試について
グローバル・ワークショップ入試は、国際教養大学が実施する特別選抜試験の一つです 。募集人員は5名で、合格した場合の入学を確約する専願制となっています 。
選抜は、自己アピール書や調査書などの書類審査に加え、大学のキャンパスで実施されるグローバル・ワークショップでの活動、そこで作成・提出する小論文、そして面接の結果を総合的に判定して行われます 。この入試は、単なる学力だけでなく、思考力や表現力、他者との協調性など、多面的な能力が評価されるのが特徴です。
インタビュイーのプロフィール
| 出身校区分 | 国内一条校 |
|---|---|
| IB選択科目 | SL:Japanese A, English B, History HL:Math AA, Chemistry, Biology |
| IBスコア | 38点 |
| 現在の在籍校 | 国際教養大学 |
| 受験した入試名称 | グローバル・ワークショップ入試 |
国際教養大学の受験体験談: 大学選び編
どのような軸で受験する大学を検討しましたか?
元々はアメリカの大学への進学を考えていましたが、学費の高さや治安への懸念から断念しました。その後、日本かオーストラリアの大学で悩みましたが、最終的に早い時期に合格が決まる国際教養大学を優先的に受け、もし不合格だったらオーストラリアの大学に進学するつもりで準備を進めました。
海外大学と国内大学で迷うIB生は多いのではないでしょうか。Hさんのように、学費や治安といった現実的な側面から選択肢を絞って行くのは、重要なプロセスです。
海外大学や国内の他の国際系学部も選択肢にあった中で、最終的に国際教養大学(AIU)を選んだ決め手は何でしたか?AIUのどのような点に、他の大学にはない魅力を感じましたか?
一番の魅力は「コストパフォーマンスの良さ」です。国公立大学と同程度の学費で、1年間海外に留学できる制度は非常に魅力的でした。また、キャンパス内の留学生の割合が非常に高いことも、他の大学にはない魅力だと感じました。日本にいながら、日常的に異文化交流ができる環境に惹かれました。
AIUには複数の入試方式がありますが、その中でグローバル・ワークショップ入試を選んだ理由を教えてください。ご自身のどのような点が、この入試形式に向いていると考えましたか?
この入試方式は、高校3年生の11月に合否が判明する早期選抜だったことが大きな理由です。もし不合格だった場合でも、すぐに気持ちを切り替えてオーストラリアの大学への出願準備ができるように、このスケジュールを選びました。また、IB生は一般入試の対策が難しいため、プレゼンテーション能力などが評価されるこの形式が自分に向いていると考えました。
Hさんのように、早期に結果が出る入試を第一志望に据え、その後のプランBをしっかりと立てておく戦略は非常に参考になります。自分の強みを活かせる入試形式を選ぶという点も、IBの多様な活動経験を持つ皆さんにとっては重要なポイントですね。
国際教養大学の受験体験談: 出願編
出願書類について
グローバル・ワークショップ入試では、WEB出願サイトでの登録に加え、以下の書類の提出が必要です。
志願票
志願宛名票
調査書
自己アピール書
グローバル・ワークショップ入試に向けた全体の準備は、いつ頃から具体的に始めましたか?
書類審査は高校3年生の5月頃にあり、その締め切りの2週間ほど前から急いで準備を始めました。4月頃から始めようとは思っていたのですが、少し遅れてしまい、かなり慌ただしくなってしまいました。
自己アピール書では、ご自身のどのような経験や強みをアピールしましたか?
私が入試を受けた年のテーマが「持続可能な社会におけるユースの参画意義」であり、自身の経験と非常にマッチしたものでした。特にCASでのSDGsに関連する活動、例えばフェアトレードのカフェを運営した経験や、「SDGs未来甲子園」でファイナリストに選ばれた経験などを中心にアピールしました。EEについては、テーマ自体は直接関係ありませんでしたが、様々な視点から物事を分析する楽しさを学んだ経験が、AIUのリベラルアーツ教育への関心に繋がっていると説明しました。
自己アピール書を書き上げるまで、どのくらいの時間がかかりましたか?
2週間という短い期間でしたが、基本的には先生とマンツーマンで、合計10回ほど提出を繰り返してアイデアを練り上げました。提出直前には先生に大幅な修正をしていただくこともありました。また、根本的なアイデアについては、AIUに進学した学校の先輩に相談に乗ってもらいました。
募集要項には「検討段階においては、ChatGPTなど生成系AIを含む外部リソースを利用しても構いません」と記載があります。もし活用された場合、具体的にどのように活用しましたか?
少しだけ利用しました。具体的には、自分が書いた日本語の文章を、より丁寧な表現にリライトしてもらう程度です。ただ、AIを使うと意図したニュアンスが変わってしまうことを避けたかったので、基本的には自分の言葉で書くことを心がけました。
AIUが募集要項で生成AIの利用を認めているのは興味深い点です。Hさんのように、アイデアの壁打ちや表現の洗練といった「補助的なツール」として活用するのが賢い使い方かもしれません。自分の言葉で自分の経験を語ることが重要であるという考えは、参考になります。
国際教養大学の受験体験談: グローバル・ワークショップ編
当日のグローバル・ワークショップは、どのようなテーマで、どのような流れで進みましたか?
書類審査を通過した19名がAIUのキャンパスに集まり、1泊2日の日程で行われました 。テーマは書類審査の時と同じ「持続可能な社会におけるユースの参画意義」でした。初日の午前中は先生による講義を受け、その後全体でディスカッションを行いました。午後は4〜5人のグループに分かれ、2日目に行うプレゼンテーションの準備に時間を費やしました。
ワークショップに向けて、事前に対策などはしましたか?
ワークショップの具体的な進め方は当日まで分からなかったので、プレゼンテーションの練習といった形式的な対策は特にしませんでした。私が行った事前準備は、唯一分かっていた「テーマ」について、自分の考えを深く固めておくことです。具体的には、まず一次審査の際に大学から共有された分厚いPDF資料をしっかりと読み込みました。その上で、自分が提出した自己アピール書などの書類も改めて読み返し、当日の議論で他の人の意見に流されて自分のビジョンを見失ってしまわないように、考えの軸を再確認しました。当日のための特別な準備にはほとんど時間をかけず、あくまでテーマに対する自分自身のアイデアや立場を明確にしておく、という本質的な準備だけで本番に臨みました。
Hさんの準備方法は、テーマについて「自分の考え」を深く掘り下げることに集中したのがポイントです。これさえあれば、当日の形式がどうであれ、柔軟に対応できる賢い戦略だったと言えます。
ワークショップでは、具体的にどのような活動を行いましたか?特に意識して取り組んだことは何ですか?
活動の中心は、2日目のプレゼンテーションに向けた準備でした。ポスターとスライドの両方を作成する必要があり、ポスターは手書きで作成しました。グループ内では、リーダーシップを取りたいメンバーが他にいたので、私はその子のサポートに回ることを意識しました 。他の人の意見を否定せず、議論が滞ったり、方向性がずれたりした際に、状況を整理してチームがまとまるように働きかけました。
必ずしもリーダーを務めることが、ワークショップで評価されるというわけではありません。Hさんのように共同作業を円滑にする役割も重要です。大切なのは、割り振られたグループ内で何が必要で、自分がどの役回りをするべきなのかをきちんと見極めることです。
ワークショップではどのような言語が使われましたか?
講義でスクリーンに映し出されるスライドは英語でしたが、先生の解説やその後のグループディスカッション、プレゼンテーション、そして小論文は、全て日本語で行われました。
ワークショップで課された小論文について、教えてください。
ワークショップの最後に約1時間半、小論文を書く時間がありました。ワークショップ全体と同じ「持続可能な社会におけるユースの参画意義」についてで、それまでのグループディスカッションやプレゼンテーションなどを踏まえて、自分の考えを論述する形式でした。PCやスマホの持ち込みが自由で、その場で調べ物も可能でした。そのため、知識の暗記力というよりは、情報を集めて時間内に自分の考えを論理的に構築する力が試されていると感じました。
グローバル・ワークショップの活動において、IBでの経験が活きたと感じる場面はありましたか?
非常に活きたと感じます。ワークショップでは、CASでの活動経験が直接テーマに関連していたため、具体的な話ができました。また、その後の面接では、TOKの学びが役立ちました。TOKで様々な分野の知識を横断的につなげて考える訓練をしていたおかげで、AIUのリベラルアーツ教育で学びたい理由を、自身の経験と結びつけて具体的に説明することができました。
国際教養大学の受験体験談: 面接編
面接はどのような形式でしたか?また、どのような雰囲気でしたか?
面接官3名(日本人教授2名、外国人教授1名)に対して、私1人の個人面接でした。雰囲気は非常に和やかで、こちらの話にすごく良い反応を返してくれました。言語はほとんどが日本語で、最後に英語の質問が2問あった程度です。
面接では、具体的にどのようなことを質問されましたか?
自己アピール書やワークショップの振り返りに関する質問は一切なく、主に「AIUで何を学びたいか」という点が焦点でした。私が自己アピール書で日本の教育問題やビジネスへの興味を示していたため、それに関連して「秋田という田舎で、どのようにビジネスをしようと思うか」といった具体的な質問をされました。英語の質問は、「子供の頃の一番の思い出」といった日常的なものと、「日本の移民問題についてどう思うか」という社会的なテーマの2問でした。
Hさんの話によると、英語の質問は全員共通のものですが、日本語の質問は生徒の興味に合わせて違っていたそうです。日頃から、自分の関心のある分野に目を向けておくことが面接の対策になると思います。
国際教養大学の受験体験談: 最後に振り返って
大学選びの際に抱いていたイメージと、実際に入学してみて感じるポジティブな点や、もしあればギャップについて教えてください。
ギャップとしては、1年生は全員が英語の授業だけを受けなければならない点です。私は英語を「使って」何かを学びたかったので、少し苦労しました。ポジティブな点は、やはり他の大学に比べて留学生と深く関わる機会が多く、学習環境も非常に整っていると感じる点です。2年次以降はリベラルアーツ教育で多様な科目を学べることもとても楽しみです。
大学受験全体を振り返って、またAIUでの学修において、「IBをやっていて良かった」と感じることはありますか?
IBでの経験は、大学での学びに直結していると感じます。授業や教科書が英語だったので、専門用語に慣れていたことは大きなアドバンテージです。また、エッセイの書き方や論文を読む力も、IBの訓練のおかげで身についていました。TOKやCASを通じて、知識を横断的につなげる重要性を学べたことは、まさに大学での学びの「先取り」ができたと感じています。
このグローバル・ワークショップ入試は、どのような人に向いていると感じますか?
この入試は、ディスカッションやプレゼンテーションでのパフォーマンスが重視されるので、やはり自分の意見を人前でハキハキと話せる人、議論をリードしたり、積極的に参加したりすることに自信がある人に向いていると思います。
逆に言うと、そういったことに自信が持てない、人前で話すのが少し苦手だと感じる人には、正直あまりお勧めできないかもしれません。ただ、AIUには他にもIB生が挑戦しやすい入試があります。もしコミュニケーション能力に自信がなくても、英語と思考力に自信があるなら、同じ時期に実施される「総合選抜型入試Ⅰ」という選択肢もあるので、そちらを検討してみるのが良いと思います。
最後に、これから国際教養大学のグローバル・ワークショップ入試を目指すIB生の後輩たちへ、「これだけはやっておいた方がいい」というアドバイスをお願いします。
まず、受験スケジュールを早めに立てて、最初の書類審査に全力を注ぐべきです。書類審査の通過率がかなり低いので、ここが最初の関門です。そのためにも、特定の分野に絞らず、幅広い活動に参加して自身の興味を深めておくことが重要だと思います。
最後に
いかがでしたでしょうか?
グローバル・ワークショップ入試は合格者5名の非常に狭き門です。自身の適性にあった入試を見つけられたこと、提示されたテーマに対する自身のビジョンを明確に持っていたことが、Hさんの合格の鍵になったと思います。国際教養大学は複数の入試を実施しているので、AIUを志望する方は、ぜひ自分にあった入試形式を選ぶことをお勧めします。













