海外大学受験&進学におけるIBのメリット・デメリット

2024年8月15日

はじめに

IBは、世界中の多くの大学において入学資格として認められています。しかし実はそれだけではなく、IBをしているからこそ海外大学において役に立つことも多くあります。本記事では、現在ロンドンの大学に通う筆者が、IBカリキュラムを履修し、IB Diplomaを取得することの、海外大学受験&進学におけるメリット、デメリットをご紹介します。実体験を混じえながらお伝えできればと思います!IB取得に向けて励んでいる方、すでにIBを取得された方、IBを取るか迷っている方、海外大学受験&進学を検討されている方は、ぜひご一読ください。

入試におけるメリット

入学可能な大学が多い

まず、IBは、アメリカ、イギリス、カナダなど定番の国のみならず、シンガポールやヨーロッパ諸国でも、大学入学資格として認められています。従って、日本や各国の高校卒業資格を用いるよりも、幅広い大学を受験することが可能です。条件を満たせば、世界中の有名大学への進学が可能となります。

応募要件が免除されることも

IBは、世界でも高レベルとして知られています。通常海外大学では、学校の成績とその他各大学、学部が要求しているテストスコア(TOEFLなど)を提出し、出願を行います。しかし、大学によっては、「IBで〇〇点以上」「IBのこの教科で〇点」取ることができれば、その他のテストスコアと同等として扱う、としているところもあります。その場合、自分で外部のテストを受けに行く必要はなく、IBの点数を提出することで応募要件を満たすことができます。例えば、「IELTS オーバーオール7.5」と、「IB English B SL7/HL6以上」を代替可能としていたりします。これらのIBの点数は、外部のテストを受けるより、易しく設定されていることが多いので、お得感がありますね。

IBをしていることが箔付けに

前述したように、IBには、「難しい」という定評があります。従って、大学によっては、IB生であるというだけで優遇されたり、評価が上がる場合があります。具体的には、IB生専用の入試ルートがあったりします。実際、アメリカの高校、Crimson Academyによると、IB生のアイビーリーグへの合格率は18%高いとされています。例えば、通常スタンフォード大学への合格率は4.65%ですが、IB生は17%と、かなり高くなっています。

アプリケーションでアピールできる

IBでは、基本的な6教科に加え、EEやTOK、CASを行います。多くの海外大学では、受験する際にエッセイやアプリケーションフォームに入力する必要があり、その大学で学びたい理由や課外活動について説明しなければなりません。その際に、IBで学んだことや経験したことをアピール材料にすることが可能です。例えば、「IAで〇〇をした」、「EEで〇〇についてリサーチし、興味を深めた」等、ご自身の興味関心や、志望動機を理由づけできます。

 

経済面でのメリット

IB生専用の奨学金

大学によっては、IB生のみが対象の奨学金を用意していることもあります。特にアメリカやカナダの大学に多い印象です。出願時に自動的に考慮される場合もあれば、自分で応募する必要があるものもあります。それほど、IB生が評価されているということですね。

ファンデーションコースが不要

イギリスやヨーロッパの大学では、高等教育課程が3年間ということで、大学1年生から専門的な授業が始まります。よって、日本の高校や各国の高校カリキュラムを卒業しただけでは、そのまま大学に入学できず、1年間大学準備コース、通称ファンデーションコースで学んだ後、大学入学という形を取ることが通常です。しかし、IBカリキュラムは、その名の通り「大学入学資格」のため、IBDPを取得している生徒は、ファンデーションコースを受講する必要はありません。欧州の大学にストレートで入学すると、3年で卒業できるため、嬉しいですね。

 

海外大学に在学中もIBは役立つ!

大学の単位に変換可能

実は、アメリカやカナダの一部の大学では、IBで履修した教科を、大学の単位に変換できることがあります。もちろん「〇〇のHLで〇以上」のように、一定の成績は求められますが、大学で取得しなければならない単位数が減るのはありがたいですよね。大学1年生の間の、基礎的な内容の単位と互換性がある場合が多いです。トロント大学など、名門大学も導入している制度なので、是非チェックしてみてください。

エッセイを書くのが楽

IBの大きな特徴として、よく挙げられるのが「エッセイを書く」ことです。IBでは、試験が筆記中心であるのに加えて、IAやEEなど、多くの学術的な文章の執筆が必要とされています。海外大学に限ったことではありませんが、大学では、様々なエッセイや論文、試験において、長いアカデミックな文章を書くことが求められます。そんな時、IBで培った文章力や構成力が、課題に取り組む上で役に立ちます。他のカリキュラムを卒業した学生と比べて、IB生は大学に適応しやすいと言えるでしょう。

大学が意外と楽!?

海外大学は、「卒業するのが大変」で「毎日が勉強漬け」だと言われています。確かに、単位は取らなければなりませんし、毎日のように課題や課題図書が出されます。しかし、皆さんご存知のように、IBも2年間継続的に勉強し、テストや課題、最終試験に向けて準備する必要があります。大学では、内容の難易度こそ上がるものの、勉強の量やインテンス度では、IBとそれほど変わらないと私は感じました。従って、IBの勉強量やワークロードに慣れると、意外と大学が楽に感じられるかもしれません。

 

実際、IBは役に立ったのか?

少なからず役には立つ!

筆者は現在、ロンドンの大学で、政治学を学んでいます。文系学部なので、課題はエッセイが中心なのですが、主に①エッセイの書き方、②課題に対するマインドセット、③基礎知識の点でIBをやっていて良かったな、と思うことがあります。

エッセイ

まず、エッセイのお題が出た時、頭の中でエッセイの構成が組み立てられること。IBでは、瞬時に習った内容を文章中に組み込み、エッセイを構成する必要がありました。大学でも同様で、文章の流れや抜粋箇所等、効果的に議論を展開するには、どのようにエッセイを書き進めれば良いか、等考えることができるのは、IBのおかげだと感じています。

学習習慣

IBでは、IAや日々のテストなど、継続的に何かしら課題が出されます。これは一種の「慣れ」なのですが、IBで行っていた日常的な学習によって、大学での毎週の課題を、特に問題なく受け入れられることができました。人によっては、多すぎると嘆いていたので、IB生の学習習慣は、大学においても役立つと言えるのではないでしょうか。

勉強内容

一部の授業では、IBで習った知識を取り扱うことがあります。もちろん、大学の方が深い内容まで触れるのですが、IBでの基礎知識があることで、理解しやすかったり、より深い洞察が可能になると感じました。

友達作り

最後に、世界中でIBを卒業した学生が大学に集まってきているため、友人作りはしやすいと思います。IBの愚痴や苦労を分かち合い、共通の話題から仲良くなる、なんてこともよくあります。

正直、「必要だった…?」と思うことも

コスパ

私の場合は特にイギリスの大学のため、IBではなくイギリスの高校カリキュラム、「A-Level」を卒業し大学に進学してきたクラスメイトが多くいます。彼らは、高校の間、3教科のみを学習し、授業も毎日数時間しかなかったといいます。そういった話を聞くと、「私は毎日6、7時間授業を受けて、今の勉強に関係のない科目も履修していたのに、同じように入学できるのか」と少し疑問を持ってしまいます。ただ、こればかりは、両方体験している人がいないので、一概にどちらが良いと言えないのも、事実です。

CASやTOKの必要性

IBでは、主要6教科に加え、コア教科としてCASやTOKを行います。しかし、正直なところ、CASとTOKは大学で役に立ったと感じたことがありません。私は、大学で哲学の授業を取った経験もあるのですが、TOKでは、AOKやWOKといった、IBが作り出した概念を社会的文脈に当てはめるだけで、根本的な「知とは何か」「宗教とは何か」といった哲学的な問いに答えようとはしていないと感じました。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。IBのメリットは、以下の通りです。

  • 入学できる大学の幅が広がる
  • 応募要件が免除されることがある
  • 合格率が高い
  • アピール材料になる
  • IB生専用の奨学金がある場合もある
  • ファンデーションコースの受講が不要
  • 大学が楽に感じられる
  • 単位に変換できる

しかし、IBは全方面において最強なわけではなく、デメリットもあるという二面性を理解した上で取り組んでください。