国際基督教大学(ICU)|ICUと言えばリベラルアーツ教育!その魅力とは?

開学当初よりリベラルアーツカレッジとして教養学部のみを設ける国際基督教大学(以降ICU)。リベラルアーツ教育は、日本ではあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、学士課程において、専門科目だけを学ぶのではなく、幅広い視点を持ちながら専門の学びを深めていく教育プログラムを指します。

リベラルアーツ教育を実施しているICUでは、どのように授業が行われているのでしょうか。この記事では、ICUの特徴や国際バカロレア生にとっての魅力、入試についてご紹介します。

国際基督教大学のキャンパスは東京都三鷹市に位置しており、学部生、院生数合わせて3,265名なのに対し620,000m²と東京ドーム13個分ほどの広大なキャンパスを誇っています。キャンパス内は東京とは思えないほど緑豊かで静かなため、鳥のさえずりが聞こえ、ゆっくりと時間が過ぎるように感じます。

このゆったりとしたキャンパスの雰囲気とは対照的に、授業では少人数でディスカッションやグループワークが行われ、学生たちは日々切磋琢磨しています。

インタビューさせていただいた先生

森島 泰則 教授(国際基督教大学)

言語心理学、認知心理学を学生に教えるのと同時に2010~2012年まで同大学のアカデミックプラニング・センター長、2015~2018年までアドミッションズ・センター長を務められました。学生数の多い授業では、コメントシートにて学生の声・質問が聞こえるようにし、小人数の授業ではグループワークでリサーチや実験、プレゼンテーションを課題として出すなど、学生とのコミュニケーションを重視されています。

ICUのリベラルアーツ教育とは?

文理融合のバイリンガル教育

ーICUで実施されているリベラルアーツの特徴を教えて下さい。

「ICUのリベラルアーツで得られるものは何か、それはまず文系、理系にとらわれず、バランスのとれた偏りのない知識だと思います。この複雑な現代社会の中で、良い判断をするには幅広い知識と判断材料が必要です。例えば原発の問題にしても技術的、社会的、環境的な面が複雑に絡んでいますよね。フードロスの問題をとっても、ただただ勿体ないから捨てないという原則論だけでは、食品業界にとって現実的解決策になり難いでしょう。このような複雑な問題を解決していくには、一つの分野の専門知識だけではなく、文理を超えた幅広い知識が必要なのです。
しかし、多くの大学では文系・理系のどちらかに専門化した学びをして卒業します。ICUの学生も比率で言うと、文系学生の方が数は多いです。しかし、重要なのは、単に文理関係なく授業がとれるということ以上に、文系思考と理系思考の学生、つまり考え方の違う学生が同じ授業をとり意見交換ができる機会が多くあるという事です」(森島教授)

ICUのウェブサイトにある「断片的なままでは役に立たない知識を互いに関連づけ、統合し、その中で、自らの専門分野を超えて広く知識の交流をなし得る人を養成する。ICUが 教養学部(liberal arts college) の制度をとり、リベラルアーツ教育に力をそそぐ根拠」が先生のお話を通して見えました。

ーICUの魅力の一つは帰国生、IB生が言語面でこれまでの経験を活かせるバイリンガリズムだと思いますが、どのように実践されているのでしょうか?

「まず、ICUには語学習得のためにELA(English for Liberal Arts Program)とJLP(Japanese Language Programs)があります。入学時、主たる学習言語ではない言語(英語もしくは日本語)を集中的に伸ばし、トレーニングするプログラムです。レベルに応じてクラス分けされます。

次に、学部では英語開講と日本語開講の授業があります。例えば、「現代心理学入門」のように春学期は日本語、秋学期は英語と、両言語開講になっている科目もありますが、全部ではありません。多くの科目は英語のみ、あるいは日本語のみというように分かれています。今は3割ほどの科目が英語開講です。学生は語学プログラムの言語で開講される科目を最低9単位履修することが定められています。

母語でない言語で授業を取るということは、語学として学ぶのとはわけが違い、思考やコミュニケーションもその言語で行う必要があります。そのため、ICUの日英バイリンガリズムでは複数言語での思考力やコミュニケーション力が向上し、結果として言語能力も上達します。」(森島教授)

メジャーとサポート体制

ーICUに入学した場合、メジャー(専修分野)はどのように決めていくのでしょうか?

「大雑把にお話をしますと、入学時点ではメジャーは決めず、入学時期に関わらず2年間(6学期)を終えたところで選択します。最初の2年間は探究の2年間と言えます。この2年間をどう進めていくかが重要で、メジャーを決めなくていいから色々な授業をつまみ食いで進めてよいか、と言うとそうではない。それでは知識が積み上げられず、時間も足りません。メジャーにはそれぞれ選択要件があり、メジャー選択時までにそれを満たすように履修しなければなりません。そのことを考慮に入れて、興味のあるメジャーの基礎科目、一般教育科目などを調整し、計画を立てて進める必要があります。」(森島教授)

ーそれは大変ですね、サポートなどはあるのでしょうか?

「サポートの制度は大きく分けて二つあります。一つ目は、大学の創立以来ずっと続いているアドヴァイザー制度。毎学期の授業登録の際に、自分のアドヴァイザーとなっている教員と面談をする制度です。学生は、前学期の成績と履修を希望している科目リストを見ながらアドヴァイスを受けます。前学期の成績が思わしくないのに、選択している科目が多い場合、取りたくても取るべきではないとアドヴァイスされることもあります。逆に前学期優秀な成績を残している場合は、チャレンジしても良いというアドヴァイスを受けるでしょう。3年間は同じ教員がアドヴァイザーを務め、4年目は卒業論文の指導教員がアドヴァイザーになるのが一般的です。アドヴァイザーなので、授業登録日だけではなく、他にも学生生活や留学などの相談に乗ることもあります。

もう一つのサポート制度はCTL (Center for Teaching and Learning)のアドヴァイジングです。主にメジャー選択前の学生を対象に、サポートを行っています。教員のアドヴァイザーは、自分の専門分野でない相談に対して詳しいアドヴァイスが出来ない事もあります。そんな時、センターのスタッフが学生の面倒を見てくれますので、いつでも相談に行くことができます。スタッフはどの分野についても情報収集をしているので幅広く相談に乗ってくれます。また、専門的な相談になった場合は、各メジャーの窓口となるメジャーアドヴァイザーに橋渡しをしてくれます。CTLには学生のアドヴァイザーもいます。」(森島教授)

少人数かつディスカッション中心の授業

ー授業の特徴について伺います。ICUは少人数制で対話を重要視されていると思いますが、どのような授業がありますか?

少人数制の授業を大切にしていますが、講義もあります。特に基礎科目の授業は講義が中心で大人数のクラスもあります。でも、心がけているのは学生同士が十分にディスカッションできる時間をとる事です。教員によってはディベートをさせたりもしているようです。私の「言語心理学」は、40~50名のクラスですが、グループワークでディスカッションをさせています。実験系の授業なので、グループで実験を考え、準備、データ収集と分析、発表、そしてレポートを書きます。

具体的な授業の例として「言語心理学」で、動物のコミュニケーションについて学んだ際のお話をします。その授業ではまず、猫でも犬でもゴキブリでも好きな動物を選び、どういったコミュニケーションをするかを調べます。虫だったらフェロモン、猫なら鳴き声だったり。調べた情報を、1ページのサマリーにし、授業で話し合います。人間の言語の特徴を捉えた基準がありますが、それをベースに人間と動物のコミュニケーションの共通点や相違点は何か、連続性はあるのかなどをディスカッションします。

去年はそのクラスに60人くらいいたのでなかなか大変でした。4~6人のグループが10できました。日本人学生も、留学生もいましたが、好きに組ませると固まってしまうので、ランダムにグループを分けたところ、おのずと使用言語が英語になりましたね。」(森島教授)

ーディスカッションによってどのような能力が身につくと思いますか?

「東洋人は一人で沈思黙考することが勉強だと思い込む傾向にありますが、思考は他の人と意見交換をすることによって進むと思います。ある入門のクラスで話し合いをしなさいと言ったら、授業後のコメントシートで、『今までは一方通行の授業しか受けたことがなかったから、意見交換ができて刺激になった』と書いてくれた学生がいました。

日本人の学生は考えているけど発言をしないことが多いです。考えているなら言った方がよいと思うのですが、日本の学生は受け身の授業を受けた人が多いので仕方がないのかもしれません。ですが、意見交換をすることにより、自身の考え方を振り返り、他者の考えにも触れるので、思考を深めるのには大事だと思っています。

情報として教えたいと思うことを講義で語る方が、ディスカッションするよりも短時間で教えられます。しかし、私は情報を知識として受け取る事が学びだとは思いません。情報を使ってディスカッションし、自分で考える訓練をすることが大切だと思っています。将来仕事をするときに情報を扱い、思考するよう訓練ができるのであれば、多少言語心理学の知識として知ってもらいたいことを犠牲にしても、この方法の方がよいとさえ思っています。」(森島教授)

IB生の受け入れについて

ーIBDPを取得するために頑張っている学生たちの代わりにうかがいます。ずばり、IBのスコアはどのくらい重視していますか?

ICUでは、IB生だけを対象とした入試はありません。しかし、書類選考(Universal Admissions:April/September Admissions by Documentary Screening)の場合、IBのスコアで受験できます。出願はすべて英語ですが、IBを最大限に利用できる入試ですので、IB生の方にはぜひチャレンジしてほしいです。過去5年間の合格者のIB平均点は34点です。

ICUの入試で重視しているのは、IBのスコアだけではありません。ICUのリベラルアーツカリキュラムで学びたいか、ICUのプログラムの方向性と学生が合っているのか。文理科目を横断して学ぶという意味では、例えば写真家として必要な専門知識だけを学びたい人には向きませんよね。人物としてもどのように成長したいのかという目標、ただ単に勉強だけでなく、これまで人間的にどういった成長をしてきているのかという点はエッセイや推薦書ににじみでてくるものなので、スコア以外のすべての書類を総合的に評価しています。」(森島教授)

ーIB生を積極的に受け入れていますか?

「IBで培ってきたことはICUの対話型、探求型の授業と親和性が高いです。IB生はプレゼンやディベートに慣れており、積極的に取り組む姿勢が、日本の高校出身の学生にも良い刺激になります。ICUでは1970年代より多くのIB出身学生の入学を受け入れてきていますし、今年の4月からはIB教員養成プログラムもスタートし、IB教育を実践できる素質を持った人材の育成にも取り組んでいます。また、2021年には従来のAO入試(‘総合型選抜‘に名称変更予定)にIB認定校を対象とした入試が加わります。これはDiploma生であること及び日本語Aを履修済(履修中)であることが必須です。Diploma生ではない場合は一般入試や総合型選択の別カテゴリーで受験ができます」(森島教授)

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筆者は高校でIB Diplomaを取得し、アメリカのリベラルアーツカレッジを卒業しましたが、メジャーの選択時期や文理科目を横断的に学べるアメリカのリベラルアーツのシステムと共通点が非常に多いと感じました。例えば授業が少人数制で、対話ベースであるのも類似している点です。日本にいながら、海外の大学と同じシステムで学べる、それだけではなく、日本語力も英語力も同時に上げることができるという、ICU独自の魅力が今回の取材で見ることができました。

森島先生のお話にあったように、ICUを目指す場合は、「ICUのリベラルアーツというカリキュラムで学びたいか」、「どのように成長したいのか」ということを明確にしておく必要がありそうです。ぜひ一度、オープンキャンパスなどを利用して、実際にどんな学問を学べるのかを体験してみてください。

国際基督教大学

学部:
教養学部